映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ディス/コネクト

2014年06月13日 | 映画(た行)
現実の人間関係の希薄さ故に



* * * * * * * * * *

私、この題名とチラシの印象で、なんだかホラー作品のように思ってしまっていたのですが
決して、そうではありません。
きわめて今日的テーマではありますが、つまりは人と人とのつながりの大切さを描く
見応えのあるドラマです。

★イタズラでSNS上女性になりすまし、同級の少年をいじめる少年たち。
しかしやりすぎて、その少年が自殺を図ってしまう。



★ネットで個人情報を盗まれ、貯金をすべて奪われてしまった夫婦。



★ポルノサイトに出演する未成年者にインタビューを試みる女性TVレポーター。




SNSがらみの事件に巻き込まれる、3組の人々の群像ドラマです。
・・・だからネットのつながりは怖い、と、そういうこともあるのですが、
そもそも彼らがSNSにハマる原因は、
いずれも、現実の身の回りの人とのつながりの希薄さ。

自殺を図った少年は友人もなく、
父親にも無視されていると感じていた。

チャットにハマった妻は、夫に省みられなく、
チャットのやり取りで心を慰めていた。

ポルノサイトの少年は、
「みんなを興奮させているだけ。悪いことはしていない」という。


友人や家族。
本当は手を伸ばせばもっとわかりあえて、気持ちが通じ合える存在がそこにあるのに、
何故か見知らぬ相手とのつながりを本物と感じてしまう。


自殺した少年の父は、イタズラの犯人を突き止めようとパソコンにかじりつき、
昏睡状態の息子を省みようともしない。
それを見た少年の姉は

「そうやって、あの子がこうなってしまった現実から目を背けているだけ」

と父をなじる。
確かに。
いつからこんなふうになってしまったのか。
なんだかちょっと身につまされるところもあるのでした。
もっと現実の人とのつながりを大事にしよう・・・。
でも、作中にもありますが、
SNSでは見知らぬ相手だからこそ、素直に本音を話せる場合もあるのですよね。
でも、それがどんな相手なのか何もわからないというところが
実はやっぱり怖い。



何も知らないうちに、個人情報を盗まれカードで預金がみな使われてしまっていた、
などというのは、その現実もさることながら、
その「見えない悪意が」実に不気味で怖い。
昔ながらに、パソコンなんて使わない生活のほうが幸せのように思えてくる。
でも、私達はもう決して元には戻れないでしょうね・・・。



3つの事件は、それぞれが同時に危ういクライマックスを迎えます。
その盛り上がりはなかなかです。
(先日「マグノリア」を見た私は、
この辺りでカエルが降ってくれば一丁上がりなのだけど・・・と、思ってしまいましたが。)
でもイタズラに悲惨な最後とはならないところが救いでした。
というよりむしろ、それぞれにこの苦難を乗り越えた結果が出るところが
やはりいい。
まさに今どき、見るべきドラマです。



「ディス/コネクト」
2012年/アメリカ/115分
監督:ヘンリー・アレックス・ルビン
出演:ジェイソン・ベイトマン、ホープ・デイビス、フランク・グリロ、ミカエル・ニクビスト、ポーラ・パットン

現代的テーマ度★★★★★
満足度★★★★☆