映画と本の『たんぽぽ館』

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「55歳からのハローライフ」村上龍

2014年06月22日 | 本(その他)
55歳からでも新たな“ライフ”を!

55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫)
村上 龍
幻冬舎


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希望は、国ではなく、あなた自身の中で、芽吹きを待っている。

多くの人々が、将来への不安を抱えている。
だが、不安から目をそむけず新たな道を探る人々がいる。
婚活、再就職、家族の信頼の回復、
友情と出会い、ペットへの愛、老いらくの恋…。
さまざまな彩りに充ちた「再出発」の物語。
最新長編小説。


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この本、解説で北野一さんも述べていますが、
パッと見で「55歳からのハローワーク」だと思っていました。
だって「13歳のハローワーク」という本を著している方でもありますし、
てっきり今度はシニア向けの職業案内もしくは、転職をテーマにした本なのかと・・・。
しかし、よく見れば「ハローライフ」なのですね。
「ワーク・ライフ・バランス」という言葉もあるくらいで、
「ライフ」をどのように充実させるか、
それは「ワーク」をどれだけ充実させるのかと同じく、
非常に重要な事であるわけです。
本作では、55歳で人生の転機を迎えた5人の男女のが、
これまでの人生を見つめなおし、
新たな道を歩み始める様子が描かれています。


これが60歳であればまあ一般的「定年」の年齢で、
「勇退後の生活」というイメージが大きくなりますが、でも55歳。
まだこれまでの仕事や生活が続くことが予想される年代なのかもしれません。
だけれども、あえて、まだ終わっていない人生をやり直すという意味で、
55歳、というのには意義があると思います。


私は冒頭の女性の話が気に入っています。
夫が退職して、一日中テレビを見ながらブツブツ文句と愚痴を言っているのが
耐えがたく嫌になってしまった。
そこであっさりと離婚し自活を始めますが・・・。
生活は楽ではないし、やはりひとりでは寂しい。
そこで結婚相談所に登録し、お見合いを重ねます。
結局は、元の夫か、新たな夫の元へ戻っていく物語なのかとおもいきや・・・、
そうではないところが気に入りました。
お一人様、いいじゃないですか。
いくつになったって、女は自立して生きていけばいい。
初めからそういう道を選択する人だっているのですし。


これらのストーリーのなかにはもうひとつ、共通項がありまして、
それは「飲み物」です。
それぞれの主人公たちが、自らの気持ちを慰めるために飲む「飲み物」が登場します。
それは紅茶であったり、コーヒーであったり、
水であったりしますが、そんなところの描写も楽しめます。
私ならさしずめ・・・やっぱり紅茶かな?
特にダージリンのファーストフラッシュは、私にほんのり幸福感を呼び起こす。
贅沢感、なのかもしれません・・・?


私、55歳はちょっと過ぎているけど・・・、
家出して、全く違う人生に飛び込んでみたいなんて気持ちはあるなあ。
実行に移す勇気はありませんが。


NHKでドラマ化。
さっそく見ています。

「55歳からのハローライフ」村上龍 幻冬舎文庫
満足度★★★★☆