映画と本の『たんぽぽ館』

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「ポーの一族 ユニコーン」萩尾望都 

2019年08月15日 | コミックス

構成力!!

ポーの一族 ユニコーン (1) (フラワーコミックススペシャル)
萩尾 望都
小学館

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旧作のラストに直結する新エピソード開幕!

40年ぶりの新作発表で話題となった『ポーの一族 春の夢』の続刊。
旧作のラストエピソード「エディス」で炎にのまれたアランとその後のエドガー
そしてバンパネラ一族の運命が紡がれる衝撃の新エピソードです。

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40年ぶりに新作が発表された「ポーの一族」。
その2冊めが出ました。
しかし、おどろくではありませんか、この冒頭、2016年。
私、前巻「ポーの一族 春の夢」のブログ記事で、
今「現在」に生きるエドガーを見たい、などと書いていたのですが、
まさに、そのとおりとなりました。


実は40年前、この物語のラストエピソードというのは、当時の「現在」が舞台で、
エドガーとアランが炎に包まれる、というところで終わるものだったのです。
本作はそこから直につながる物語。
この40年間、エドガーはどうしていたのか、あのときどのようにして助かったのか、
その事がわかります。
・・・つまり、あるところでひたすら眠っていた・・・というより
死んでいたと言ったほうがいいのかも。
アランの遺骸を胸に抱きしめたまま・・・。


考えてみたらその40年間というのは、ちょうど私が就職してから退職するまでの期間。
若くハツラツとしていたはずの乙女も、すっかりおばちゃんとなってしまいました。
しかし、エドガーは変わらないのです。
永久を生きるもの・・・。
うーん、実感しますねえ。


さて、でも新シリーズのはじめになぜこのことが語られなかったのか。
「春の夢」は第二次世界大戦下の物語だったのですよね。
しかしそこでファルカが登場し、エドガーが「テレポーション」能力を取得することが、
本作には必要だったわけなのです。
本作に必要な登場人物やシチュエーションを語ることと合わせて。
うーむ。
何という構成力。
さすがとしか言えません。


「現在」に目覚めたエドガーですが、本作で主に語られるのは1958年、
「春の夢」につながるストーリーです。
永久を生きる様々な者たちそれぞれに焦点を合わせれば、
物語はどんどん裾野を広げていく。
この先が楽しみです。
とりあえずアランは復活するのや否や。
それについてはまだまだ先のことになりそうですね。


今年は萩尾望都さんデビュー50周年。
札幌にも「ポーの一族展」来ないかな・・・。

「ポーの一族 ユニコーン」萩尾望都 小学館
満足度★★★★☆