映画と本の『たんぽぽ館』

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アルキメデスの大戦

2019年08月02日 | 映画(あ行)

天才数学者と戦艦

* * * * * * * * * *


昭和8年。
日本帝国海軍上層部で、巨大戦艦の建造計画が持ち上がります。
しかし、海軍少将・山本五十六(舘ひろし)は、今は空母こそが必要、と異議を唱えます。
それでも大勢は戦艦建造に傾きかけている。
山本は、戦艦建造費の算出に疑問をいだき、
天才数学者・櫂直(菅田将暉)を海軍へ招き入れます。
ろくな資料もない中、改めて巨大戦艦の見積もりを始める櫂でしたが、
いかにも猶予期間が短く・・・。

冒頭から、戦艦大和の撃沈というスペクタクルシーン。
そのリアルな大迫力に圧倒されてしまいました。
これが今の日本のVFXの威力。
すごいです・・・。
しかし、冒頭にこんな一番すごいシーンを持ってきてしまって、あとが心配・・・
などと下世話なことまで考えてしまったのですが、
しかしそれこそ、杞憂というものでした。



櫂の変人ぶりと作業のタイムリミットのおかげで、興味も湧くしスリルもある。
ストーリー展開にもグイグイと惹きつけられました。
見積もり方法が積算ではなくて別のやり方があるのではないか・・・というところが、
いよいよ数学の天才の腕の見せ所。
その詳細などもちろん私にわかるわけもありませんが、
物理学の天才・湯川が突如書き始める数式にも似た、快感がありました!!
この役、菅田将暉さんにぴったりでしたね



さてしかし、櫂は「数学で戦争を止める」などと言ってはいたのですが、
彼が「軍艦は美しいなあ・・・」といい、
自分で艦船の設計図を書き始めたあたりから、少し危ういものを感じさせます。
結局、そういうことがラストに結びついて行くわけなのですよね。
戦艦大和が建造されるのは歴史上の事実なので、仕方ありません・・・。



冒頭のシーンがあるからこそ、これからの戦争は戦艦よりも空母だという
山本五十六の言葉に説得力が出ます。
にもかかわらず、結局作っちゃうんですね。
日本中のお寺の鐘やら家庭の鍋釜まで供出して造り、
その後、撃沈して3000名が犠牲になる鉄の塊を・・・。

冒頭のスペクタクルシーンの中に、
撃墜され、パラシュートで脱出した米航空兵が海上に着水、
そこへすぐに米軍の水上艇が飛んできて、遭難者を回収する
というシーンがあるのです。
日本兵がそれを驚いたように艦上から見ている。
日本軍ならたった一人のためにそんなことはしない・・・と、彼らは知っているから。
こんな細かな技まで隠されている冒頭シーン。
そこだけでももう一度見たいです。

<シネマフロンティアにて>
「アルキメデスの大戦」
2019年/日本/130分
監督・脚本:山崎貴
原作:三田紀房
出演:菅田将暉、柄本佑、浜辺美波、舘ひろし、笑福亭鶴瓶

スペクタクル度★★★★★
満足度★★★★☆