映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「スーツケースの半分は」近藤史恵 

2019年08月28日 | 本(その他)

幸運のスーツケースの旅

スーツケースの半分は (祥伝社文庫)
近藤史恵
祥伝社

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三十歳を目前にした真美は、フリーマーケットで青いスーツケースに一目惚れし、
憧れのNYへの一人旅を決意する。
出発直前、ある記憶が蘇り不安に襲われるが、
鞄のポケットから見つけた一片のメッセージが背中を押してくれた。
やがてその鞄は友人たちに手渡され、世界中を巡るうちに
"幸運のスーツケース"と呼ばれるようになり…。
人生の新たな一歩にエールを贈る小説集。

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青いスーツケースが様々な人の手に渡りながら、世界各地を巡ることになる。
それぞれの旅行者たちには人生の転機となるような出来事があって、
これは幸運のスーツケースなのでは・・・?と思い始めるのです。


私、本作を読んで、以前見た「旅するジーンズと16歳の夏」という映画を思い出しました、
(続編で「19歳の」ものもあります。)
そちらでは友人関係にある女子高校生4人が、いつになく別々の夏を過ごすことになり、
ジーンズを一週間ごとに順番に送って身につける・・・という話。
それも「魔法のジーンズ」のようで、彼女たちそれぞれにステキなことが起こります。


さて、本作は順番につ持つことになるのは青いスーツケース。
こちらは少女ではなくて30歳前後の女性たち。
高校生ならばどのようにでも未来は開けているけれど、
30歳ともなれば現在の自分の立場に覚悟をつけていく頃。
すでに結婚しているものもいれば、
フリーライターとしての生き方に見切りをつけるべきか迷うものもいる。
ここで決めたことはそうかんたんには撤回できないだろう・・・と、そういう年齢。
そして彼女たちも個性それぞれで、旅行の仕方も
観光のコースには乗らない貧乏旅行やら、
リッチなホテルに泊まることに意義を見出しているものなど、てんでんばらばら。
そんな彼女たちがまるでスーツケースに後押しされるように、
自分の生き方を見極めて行きます。


最後の方にはこのスーツケースの由来の話なども出てきて、とても興味深い物語でした。
自分の有り様を受け入れて前に進もうとする、女達にエールを!!

「スーツケースの半分は」近藤史恵 祥伝社文庫
満足度★★★★☆