映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「さがしもの」角田光代

2019年08月08日 | 本(その他)

本は不思議なタイムマシン

さがしもの(新潮文庫)
角田 光代
新潮社

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「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、
病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。
初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。
持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。
無限に広がる書物の宇宙で偶然出会った
ことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。

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角田光代さんの、「本」をテーマとした短編集。


「旅する本」では、18歳の<私>が、ある本を古本屋に売るのですが、
その数年後、一人旅のネパールでたまたま入った古本屋でその本を見つける。
空白のページに自分が書いたある頭文字と小さな花の絵。
間違いなく自分が売った、その本。
まさかこんなところでまた出会うなんて!! 
私はそれを購入して読むと、なぜか以前に読んだときと全く印象が違う・・・。
そしてまた幾年かの後に・・・。
魔法のように、奇跡的に出会い、その都度違った内容に思える本。
本は全く変わらないのに、自分が変わっていくのですよね。
本というのは不思議なタイムマシン・・・。

 

表題の「さがしもの」は、病床のおばあちゃんにある本を探してほしいと頼まれた少女が、
できる限り古書店を回ったり、書店に問い合わせたりしたもののついに見つからず、
おばあちゃんは亡くなってしまいます。
それからまた数年後、ついに彼女は復刻本として出たその本を見つける。
そこにはおばあちゃんが見たかった「過去」が・・・。
ここでもまた本が不思議なタイムマシンのような役割を果たします。


その活字の奥から流れ出す過去の時間・・・。
やっぱり本っていいですね!

「さがしもの」角田光代 新潮文庫
満足度★★★★.5