映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ウトヤ島、7月22日

2020年03月22日 | 映画(あ行)

ワンカットのリアル

* * * * * * * * * * * *


2011年7月22日、ノルウェーのウトヤ島で起こった無差別銃乱射事件を、
生存者の証言に基づき映画化したものです。
97分の本編のうち、事件の発生から収束までの72分間がワンカットで描かれています。



その日、まずノルウェー首都オスロにて政府庁舎前で仕組まれた爆弾が爆発します。
その後、オスロから40㎞離れたウトヤ島で銃乱射事件が起こるのです。
そこでは、ノルウェー労働党青年部のサマーキャンプが行われており、
10~20代の若者が参加していました。
本作はそこに参加していた少女カヤにカメラが密着する形で
状況が映し出されていきます。



楽しげに会話していた友人たちとカヤ。
そんな中、パン・パンと爆竹の様な音がして、
そして悲鳴を上げながら何人もの参加者が走り込んでくる。
「誰かが銃を撃っている、逃げなければ!!」
居合わせた皆は建物の中に逃げ込みますが、犯人らしきものが近づいてきて、
皆はそこを出て、林の中に逃げ込まざるを得なくなります。
逃げ出す中でも、聞こえてくる銃声、悲鳴。
カヤは一緒にキャンプに来ていた妹と離ればなれになってしまったことが
気になって仕方ありません。
何でこんなことになったのか、誰が犯人なのか、全く状況はわからないのです。
逃げてきた人が言うには、犯人は複数だ。
警官が銃で撃っている。
・・・結局その話はデマだったわけです。
正しい情報がないというのはつらいものですね。



回りの状況がわからず、救助がいつ来るのかもわからず、
ひたすら逃げ惑い、少しのくぼみに身を潜め・・・恐怖の72分間。
生と死を分けるのは「運」のみ。
主人公でさえ「幸運」に恵まれるわけではないのだという、
つらい現実が私たちに突きつけられます。



結局この日、極右派の男によるテロで、
政府庁舎前では8名、ウトヤ島では69名が命を落としたという・・・。
戦慄の一作。

 

 

<WOWOW視聴にて>
「ウトヤ島、7月22日」
2018年/ノルウェー/97分
監督:エリック・ポッペ
出演:アンドレア・バーンツェン、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン、ジェニ・スベネビク、アレクサンデル・ホルメン

リアル度★★★★★
緊迫感★★★★☆
満足度★★★★.5