定石を踏まえつつ、魅力に富んだ謎が提示されて・・・
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2019年本屋大賞翻訳部門第1位
『このミステリーがすごい! 2019年版』第1位
『週刊文春ミステリーベスト10 2018』第1位
『ミステリが読みたい! 2019年版』第1位
『2019本格ミステリ・ベスト10』第1位
1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。
鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、
掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。
その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。
消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死。
病を抱えた名探偵アティカス・ピュントの推理は――。
現代ミステリのトップ・ランナーによる、
巨匠アガサ・クリスティへの愛に満ちた完璧なるオマージュ作品!
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紹介文の通り、非情に高評価を受けた本作は、早く読みたかったのですが、
翻訳モノは文庫でも結構お高いですし・・・。
しかしまあ、この度の新型コロナウイルス関係で時間を持て余し、
おまけに図書館休館のみならず予約サービスまでストップしたとなれば、
たまには自己投資(?)もやむなしと言うことで手に取りました。
しかしまあ、これが評判に違わず面白くて・・・!
上下巻まとめてご紹介でも良かったのですが、
本作においては、ただ長いから上下に分けたのではなく、
上下巻に別れている意味が、ちゃんとあるのです。
そんなところからして、凄いと思いました!
ある編集者が、ベストセラー作家であるアラン・コンウェイの
新作の原稿を読むところからストーリーは始まります。
それはアティカス・ピュントと言う名探偵が活躍するシリーズもののミステリ。
そして編集者とともに私たちも、そのミステリ小説
「カササギ殺人事件」を読み始めることになります。
舞台は1955年。
イギリスの田舎町のとある屋敷で家政婦が亡くなるという事故が起こります。
そしてその数日後に今度はその屋敷の主が亡くなる。
こちらは明らかに殺人事件。
名探偵アティカス・ピュントは助手のジェイムズ・フレイザーを伴い、調査に乗り出します。
まあ、普通に名探偵もののミステリではあります。
けれどこれがめっぽう面白い。
登場人物は皆個性的で、そして誰もが殺人の動機を持っている。
過去の事故のことや出生の秘密・・・、一見平和で美しい村ではありますが、
様々な愛憎や疑念が渦巻いています。
う~ん、実に興味深い。
名探偵がもったいぶって途中では決して自分の推理を語らないあたりも、
定石を踏まえています。
・・・そして疑念が出尽くしていよいよ謎解き?と思われるところで上巻はおしまい。
すぐに下巻に行こう!!
「カササギ殺人事件 上」アンソニー・ホロヴィッツ 山田蘭訳 創元推理文庫
満足度★★★★☆