人の考えが読めることは幸せか・・・?
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画期的な脳外科手術EEDを受けることにより、
恋人や夫婦がたがいの気持ちをダイレクトに伝え合うことが可能になった社会。
携帯電話メーカーのコムスパン社に勤務するブリディは、
エリートビジネスマンでボーイフレンドのトレントとの愛を深めるため、
干渉してくる親族たちや、コムスパンいちの変人と名高いCBの反対を押し切って、EED処置を受ける。
だが、ブリディが接続したのは、トレントではなくとんでもない相手だった!?
人の心がわかることは幸福につながるのか?
ソーシャル・メディアとコミュニケーションの未来を、
SFならではのテーマとミックスする、超常恋愛サスペンス大作。
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敬愛するコニー・ウィリス。
相変わらず、分厚い本です。
でもぐいぐい引き込まれて、さほど長さを感じません。
本作の主人公、ブリディは、携帯電話メーカーであるコムスパン社に勤務しています。
あるとき、恋人トレントからEED手術を受けようと言われます。
EED手術というのは、恋人や夫婦が互いの感情を共有できるようにする脳外科手術。
しかし、彼女のお節介で過干渉な親族たちやコムスパンいちの変人、CBから
猛反対を受けるのです。
それでも彼女はEED処置を受けてしまうのですが、
なんと彼女と接続したのは恋人トレントではなく・・・。
EED手術は感情を共有できるようになるという話だったはずが、
なぜかブリディはもっと完璧なテレパシー能力を身につけてしまうのです。
言葉を口に出さなくても、遠く離れていても、会話をすることができる。
だがしかし、例えば身の回りの人々すべての心の中の声が聞こえてきたとしたら、どうでしょう。
普通にいい人だって、その胸中は必ずしもいいことばかりではないですよね。
聞きたくない言葉、汚い言葉の無数の渦が洪水のようにブリディに襲いかかる・・・。
作中のCBが、登場の時から私は気に入ってしまって、大好きでした。
髪はボサボサ。
身なりもかまわず、いつも1人で地下のラボで機器の開発に取り組んでいる。
変人とみなされている彼は、会社の人たちとあまり関わりを持たないのですが、
なぜかブリディのEEDについては、執拗に反対だと言い続けるのです。
実は、彼がこのような「変人」になってしまったのには深いわけがあって・・・。
ま、予定調和ではありますが、実に楽しいラブストーリーでもありますので、
SFにさほど関心がない方でも楽しめると思います。
そしてもう1人の重要な登場人物、ブリディの姪・メイヴ(小学生)がなんとも魅力的。
天才少女ながら、でもやはり小学生、と言うのがミソですね。
これぞ、コニー・ウィリスワールド!!
「クロストーク」コニー・ウィリス 大森望訳 早川書房
満足度★★★★.5