無味乾燥の毎日が変わる・・・
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原作は中村文則さん。
とあれば、何らかの不穏な物語であろうと、まず覚悟をきめて・・・。
大学生トオル(村上虹郎)は、ある夜河原で一丁の銃を拾い、持ち帰ります。
その銃を手に入れたことで、彼は言い知れぬ高揚感を憶えます。
冷め切った日常の中で、トオルは緊張感やスリルを味わうために、
その銃を持ち歩くようになる・・・。
特に誰かを殺したいなどとは思っていない。
しかし、銃を持つからには撃ってみたい、そんな気持ちも高まってくるのです。
そしてある夜、何者かに傷つけられ瀕死の猫を、
「早く楽にしてやるため・・・」と自分を納得させながら、銃殺。
その数日後、突然トオルの元に刑事(リリー・フランキー)が訪ねてきますが・・・。
本作、モノクロ作品なのです。
トオルは、毎日を味気なく感じていて、何をしても面白いとは思わない。
合コンで知り合った彼女は乱暴で淫らに扱い、
学内で知り合った彼女(広瀬アリス)とはプラトニックにすごそうとする。
全くの気まぐれです。
ただ適当に、無味な日々を過ごしている。
そうした生の実感のない彼の日常が、モノクロ画面で表されているのです。
彼がこんな風になってしまったのは、彼の生い立ちに問題がありそうではあるのですが、
さほど詳しくは描写されません。
さてところが、衝撃的なラストで、画面は一転してカラーに。
真っ赤な血が飛び散ります。
色のなかったトオルの心が色を取り戻す。
こんなことで生の実感を取り戻すとは・・・!
なんとも気まぐれで衝動的な青年を、村上虹郎さんが魅力的に演じています。
続編というか姉妹編というか、「銃2020」という作品が近く公開になるようです。
<WOWOW視聴にて>
「銃」
2018年/日本/97分
監督:武正晴
原作:中村文則
出演:村上虹郎、広瀬アリス、岡山天音、リリー・フランキー、村上淳
銃の魔力度★★★★★
青年の孤独度★★★★☆
満足度★★★.5