映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「蒼路の旅人」上橋菜穂子

2020年10月09日 | 本(SF・ファンタジー)

孤高の魂を持つ青年へ

 

 

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生気溢れる若者に成長したチャグム皇太子は、
祖父を助けるために、罠と知りつつ大海原に飛びだしていく。
迫り来るタルシュ帝国の大波、海の王国サンガルの苦闘。
遙か南の大陸へ、チャグムの旅が、いま始まる!
―幼い日、バルサに救われた命を賭け、己の身ひとつで大国に対峙し、
運命を切り拓こうとするチャグムが選んだ道とは?
壮大な大河物語の結末へと動き始めるシリーズ第6作。

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「守り人」シリーズ第6作。
「旅人」とあるので、新ヨゴ皇国皇太子・チャグムを中心とした物語です。

 

これまでの本の中でも度々その名前だけは出てきていた、南の大国・タルシュ帝国。
本巻ではいよいよその姿を現します。
タルシュ帝国は、近隣の小国を手中にしながらますますその勢力を強め、
新ヨゴ皇国やロタ王国をも支配しようとその触手を伸ばしているのです。
先にチャグムが旅をした多くの島からなるサンガル王国は、今ほとんどその支配下に置かれています。

 

祖国の宮中にあっても、チャグムは父王とは全くなじめず、
その考えの違いから反目し、罠と知りつつサンガルへの軍船に乗り込むこととなり、
ついにはタルシュ帝国の虜囚となってしまう・・・。
先の旅で共にいてくれたシュガはおらず、読み手としてもなんとも心細い・・・。

 

でもさすがチャグムなのです。
苦難の中で、彼は故国を守り抜くこと、
皇室ではなくそこに生きる人々を守るために生きる決意を固めていきます。
おお・・・!! 
少年の成長の物語は大好きです。

 

私、これまでバルサの「守り人」の物語の方が好きだと思っていましたが、
ここへ来て、すっかりチャグムのファンになり、
「旅人」の物語もいいなあ・・・と思えてきました。
特に本巻のラストがすごいのですよ・・・。
夜の海を一人泳ぐチャグム・・・。
これぞ、孤高の魂。
その勇気に胸が熱くなります。

これ、リアルタイムで読んでいた方は、続きが待ちきれずに悶絶したのではないでしょうか。
私はすぐに続きに行けるのでよかった~。

 

物語は、国と国の大きな歴史の渦というスケールの大きなものへと変わっていきます。
即、続きへGO!

 

図書館蔵書にて

「蒼路の旅人」上橋菜穂子 軽装版偕成社ポッシュ

満足度★★★★★