映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ドクターM 医療ミステリーアンソロジー」海堂尊 他

2020年10月05日 | 本(ミステリ)

豪華執筆者たちが綴る医療ミステリ

 

 

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非合法組織の歯科医師。
相手の嘘を必ず見抜く内科医。
深夜の病棟で魔女を探す看護師。
老女に人格再編手術を施す脳外科医。
医療現場で起きる事件や不思議な出来事を、様々な角度から紐解いていく―。
8人の人気作家が描く、医療にまつわるミステリーアンソロジー。

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アンソロジーはどちらかというと苦手・・・。
著者の傾向が違いすぎて、一作ごとにこちらの思考回路をリセットしなければならないことが多くて疲れます。
中にはどうも苦手な文章のものもあったりして。
とはいえ、未知の著者と出会えるいい機会ではあるのですよね・・・。

本作は医療ミステリという興味深い分野だったことと、
豪華著作陣でなじみのある作家さんも多かったため、つい手が出ました。

著者は、海堂尊、久坂部羊、近藤史恵、篠田節子、知念実希人、長岡弘樹、新津きよみ、山田風太郎。

 

★「エナメルの証言」海堂尊

遺棄死体の身元確認のため、「歯」を調べるというのは、
ミステリ小説やテレビドラマなどにもよく出てくる話です。
本作はそれを逆手にとって、死体の歯を別人の治療痕と同じに加工してしまうという話・・・。
なるほど、いかにも海堂氏が描きそうなストーリー。
短編でもちゃんといつもの海堂ワールドの一環。

 

★「第二病棟の魔女」近藤史恵

近藤史恵さんの「清掃人探偵」シリーズのうちの一作。
私、このシリーズは全然読んだことがなかったのですが、興味が出てきました。
ここでは病院が舞台で、語り手は看護師。
母子関係に問題がありそう(?)な患者の女の子の話がなかなか興味深い。
人と人との関係は一筋縄では行きませんね。

 

★「人格再生」篠田節子

老人介護のありようが社会の状況によってコロコロと変わっていく・・・
ということを皮肉をこめたSF仕立てで語っています。
悪口雑言をまき散らす老人に脳手術を施し「人格再生」を図ろうとする・・・。
そこで、物わかりのいいおとなしい老人になったとして、
それが本当にあるべき人の姿なのか・・・
色々考えてしまいますね。

 

そしてラストが大御所山田風太郎さんなのですが、いかにも昭和レトロ。
金田一耕助風・・・。
もちろん悪くはないのですが、このアンソロジーの他作品とはあまりにも雰囲気が違うので、
読み始め、入り込むのに苦労しました。
そして、所々に見られる「今、これは禁句なのでは?」と思える表現。
今だから気になっちゃうのだろうなあ。
その当時は何も気にならなかったと思うけれども。

 

「ドクターM 医療ミステリーアンソロジー」海堂尊他 朝日文庫

満足度★★★☆☆