映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ミッドサマー

2020年10月07日 | 映画(ま行)

白日の下で起きる恐怖

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たまにはホラーもよかろうかと・・・。

不慮の事故で家族を失ったダニー(フローレンス・ビュー)。
心の傷がようやく少し癒えた頃に、
大学で民俗学を研究する恋人・友人たち5人でスウェーデンのとある村を訪れます。

それは、人里離れた奥地にある村というよりも、
特殊な古来からの風習を信奉する人々のコロニーのようなもの。
花が咲き乱れ、人々は皆白い衣服をまとい、穏やか。
一日のうち数時間薄暗くなるだけの夏至の日、90年に一度の祝祭が行われるのです。
9日間続くといわれるその儀式とは・・・。

北欧の、夜がない夏至という舞台とホラーは
なんだか相容れないような気がしていましたが、
いやいや、そんなことはない。
白日の下、くっきりと目に映る怖ろしいものというものも、あるものですねえ・・・。
それは白昼夢のようでもあり、現実と悪夢の境目が次第にぼやけていくような感じです。

ダニーは、実のところここを訪れる以前に「地獄」を見ている。
悲惨な家族の死。
そのため、ほとんど狂気の淵をさまよった彼女が、
こんなところに来て、ますますその狂気を増大させていくのかと思いきや・・・。

そうではない。
なんだか彼女は次第にここになじみ、落ち着いていく。
一方理性的であったはずの他のメンバーのたどる運命はいかにも悲惨。
特にダニーの恋人・クリスチャンは、普通ならヒロインを救う役割を担うはずなのだけれど、
残念ながら彼の心は始めからダニーから離れ始めている。
ま、そこが最後の悲惨な結末につながるわけだけれど。
考えてみたら、ここには悪魔とか魔女的なものは登場しないのです。

真に怖ろしいのは人の心。
外の明るさや夜の闇とも関係がない・・・。

じわじわ来ます・・・。

<J:COMオンデマンドにて>

「ミッドサマー」

監督・脚本:アリ・アスター

出演:フローレンス・ビュー、ジャック・レイナー、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、
   ウィル・ポールター、ウィルヘルム・ブロングレン

 

恐ろしさ★★★★☆

満足度★★★.5