みずみずしい、少年の日々
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俳優ジョナ・ヒルの初監督・脚本作品。
自身が少年時代を過ごした1990年代、ロザンゼルスが舞台です。
13歳の少年スティーヴィー(サニー・スリッチ)は、
シングルマザーの母(キャサリン・ウォーターストン)と兄イアン(ルーカス・ヘッジズ)と暮らしています。
兄は横暴で乱暴。
どうにもかなわないと思っています。
そんなスティーヴィーが、町のスケートボードショップに出入りする少年たちと知り合い、親しくなっていきます。
スティーヴィーから見るとクールでカッコイイ彼ら。
でも母から見れば、付き合うべきではない少年たちと見えることは、
スティーヴィーにもわかっていたのです。
彼らといて、家に帰るときには消臭剤を振りまいてたばこのにおいを消したり、彼なりに苦労しています。
でも、家にいるとみそっかす扱いのスティーヴィーも、
彼らといるとちょっぴり大人に近づく感じがするのです。
いつもバカなことを言って笑っている彼らだけれど、
でも、実はそれぞれに問題を抱えていることがスティーヴィーにもわかってきます。
そしてまた、家では威張り散らしている兄が、外では孤独で案外気弱であることも・・・。
父親不在の家なので、通常父親が担うべきストーリー上の役割をここでは「兄」が持っているわけですね。
乗り越えるべき存在、それが本作での兄でした。
ともあれ、一見「自由」な外の世界には、
もっと複雑で強大な“ままならぬもの”があることを彼は知っていく。
だけれども、そこへ踏み出すこと。
少年から大人への道ですね。
みずみずしい少年の感覚が郷愁にも似た切なさを呼びます。
<シアターキノにて>
「Mid90s ミッドナインティーズ」
2018年/アメリカ/85分
監督:ジョナ・ヒル
出演:サニー・スリッチ、キャサリン・ウォーターストン、ルーカス・ヘッジズ、ナケル・スミス、オーラン・プレナット
少年のみずみずしい感性の日々度★★★★☆
満足度★★★★☆