映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

浅田家!

2020年10月06日 | 映画(あ行)

この家族ありて、この次男あり

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様々なシチュエーションとコスプレで撮影するユニークな家族写真で注目を集めた、
写真家・浅田政志さんの実話をもとにしたストーリーです。

浅田家の次男、政志(二宮和也)は、子どもの頃から写真を撮るのが大好き。
写真専門学校に進み、卒業制作の被写体に家族を選びます。
家族の思い出のシーンを本人たちで再現して写真撮影。
その写真で、学校長賞を受賞します。

やがて政志は、同様に様々なシチュエーションを設定し、家族でコスプレして写真を撮影。
それらの写真で個展を開き、写真集も出して、プロの写真家へ。
そして全国の家族写真の撮影を引き受けるようになっていきます。
そんな2011年3月。
東日本大震災が起きて・・・。

消防士になったり、ヤクザになったり、レーサーになったり、
家族のコスプレがいかにも楽しそうで、本当にその写真集を見たらニヤニヤと笑ってしまいそうです。

がっちり入れ墨を入れてしまう政志もかなり破天荒だと思いますが、
その彼の思いつきに従って、総出で付き合ってしまう家族も相当のもの。
全く、ユニークな家族です。
お母さんが看護師で、お父さんが専業主婦という役割分担もまたいい。
いつまでも政志が仕事に就こうともせずふらふらしていることに、
「いい大人の男が、仕事もしないで家でふらふらしているなんて・・・」
と、思わず言ってしまった母親の言葉に、
他の皆が非常に気まずい雰囲気になってしまうシーン、笑っちゃいました。
この家族があっての政志なのだなあ・・・とすごく納得してしまいます。

そんな彼が、津波に襲われたがれきの街で、
せっせと写真を拾い集めてはきれいに洗って展示している学生(菅田将暉)を目にします。
政志はすぐにその手伝いを始める。
家族写真を撮る者として、その意義がとてもよくわかるのですよね。
本業もすっかり忘れて、彼はそのボランティア活動を続けます。

 

この活動のことは私たちもニュースなどで見聞きしていましたが、
実際かなり多くの写真が持ち主に引き取られたのだとか。

そんな中で本作中に、お母さんや妹の写真は見つかるのに、
亡くなったお父さんの写真が見つからない、という女の子が登場します。
果たして、その意味は・・・?

 

笑いながらも、いろいろな悲しい家族事情に涙して・・・、よい作品でした。
政志の幼なじみ・若奈(黒木華)が、政志に
「200万円返すか、結婚するか、どっちかにして!」と迫るシーンもかっこよかったなあ・・・。
その返事、その言葉もお楽しみに!

 

そしてまた、菅田将暉さん、
最近はちょっとガラが悪かったり、タカビーな役が多いように思いますが、
ここではやや気弱で優しい青年。
こういう役もしっかりなじんでいる。
やっぱり役者さんですよねー。

 

<シネマフロンティアにて>

「浅田家!」

2020年/日本/127分

監督:中野量太

原案:浅田政志

出演:二宮和也、妻夫木聡、黒木華、菅田将暉、風吹ジュン、平田満

家族愛度★★★★★

満足度★★★★★