祝! 西條奈加さん直木賞受賞
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子に恵まれず離縁され、実家の手習所『銀杏堂(ぎんなんどう)』を継ぐことになった24歳の萌(もえ)。
女先生と侮る悪童らに振り回されながら、忙しない日々を送っていた。
ある朝、銀杏堂の門前に女の捨子を見つける。
自身も血の繫がらぬ両親に愛情深く育てられた萌は、
その子を「授かりもの」として育てることを決心するが……。
真っ直ぐに子どもと向き合い成長する、時代人情小説の傑作。
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西條奈加さんは、以前から時々読ませてもらっているので、
私にとっても大変嬉しい受賞です。
その直木賞受賞作「心淋し川」は当分図書館予約では読めそうにないので、
少し古い作品を手に取ることにしました。
「銀杏手習い」は、子どもができないために婚家を出され、
実家の手習所「銀杏堂」を継ぐことになった24歳、萌(もえ)の物語。
連作短編となっています。
最近の時代小説は、江戸時代という舞台を借りて、
現代の問題点を描いていくものが多いですよね。
本作は、様々な問題をもつ子どもたちと教師の関わり、そして母と娘の絆を描きます。
まだ新米の教師・萌は、
生意気でわんぱく盛り、さっぱりいうことを聞いてくれない増之介と角太郎の二人に困ってしまう。
女であることをバカにされている。
こんな悪ガキたちとどう心を通わせていくのか・・・。
また、萌はこの銀杏堂の前に置き去りにされていた捨て子。
ここの夫婦に拾われて、そのまま育てられたのです。
そして成長し、他家に嫁ぐも、子どもができないということで、戻されてしまった・・・。
このあたりはいかにも江戸時代の話。
でも、そこから彼女は自らの才覚で生きる道を歩み始めます。
女性の自立、ここが大事。
そしてまたあるとき、自分と同じように門前に赤子が置き去りにされていて、
萌はその子を自分の子として育てることを決意。
血のつながりなんかなくたって、親子にはなれる。
子どもは一人一人がみんな違って、みんな大切。
ステキな物語です。
私がいちばん好きだったのは、「目白坂の難」。
いわば子どもたちの冒険譚です。
先に挙げた悪ガキ増之介と角太郎が、
他の女の子や年少の子どもたちを引き連れて薬草探しに行くのですが、
道に迷ってしまう・・・。
年長者として二人は他の子たちをかばい、知恵を絞ります。
まさに、少年の成長物語。
こういうのに弱いんですよ、私。
無邪気で元気な子どもたちもいいし、
そんな子どもたちの成長を認める萌の気持ちも良くわかります。
図書館蔵書にて
「銀杏手ならい」西條奈加 祥伝社
満足度★★★★☆