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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

逆光

2022年09月28日 | 映画(か行)

70年代の広島

* * * * * * * * * * * *

1970年代の広島、尾道。

22歳大学生の晃(須藤連)が夏休みに、
好意を寄せている先輩・吉岡(中崎敏)を連れて、尾道の実家に戻って来ます。
晃は吉岡を退屈させないよう、女の子を誘って遊びに出ます。
幼なじみの文江と、彼女の友人みーこ。
4人で気ままに過ごします。
そんな中で、どうも吉岡はみーこが気になるようで・・・。

 

文江はややぽっちゃり型で“美人”とはいえないタイプ。
晃と幼なじみながら、今は看護師として働いているしっかり者。
始め、晃が吉岡を連れて歩いているところにばったり出くわしたものの、
晃は知らないふりをしたことに若干傷ついています。
都会から来た友人に、こんな田舎くさい女友達がいるのを知られたくなかったのだろう・・・と、
彼女は晃の心中を正確に理解します。

晃は他に誘う女友達もいなくて、やむなく文江を誘い、
ついでにもう一人くらい誰かを連れてきてと、彼女に頼む。
そして4人でぷらぷらと遊び歩くうちに文江は気づいてしまうのです。
晃が吉岡を好きなことを。

ドラマのヒロインタイプではないものの、
この娘は、人の心の機微に気づく大人ですねえ・・・。
地元にしっかり根を張って、たくましくしなやかに生きている感じ。
それに引き換え、良い家に生まれ育った晃は、
実のところ全くガキのママのよう。

晃は無論、吉岡への気持ちを人には気取られないようにしているのだけれど、
その視線や態度などからダダ漏れ。
そしてどうやら吉岡もそれに気づいていて気づかぬフリをしているフシがある。
この微妙な均衡の破れ方がまたいい。

 

本作、登場人物は皆言葉少ななのですが、
そのあふれる感情は画面からどんどん流れ込んできます。

また、画面の色調とか、学生達の話の内容などから
70年代という時代性もすごく伝わります。
・・・でも、この主役にして監督の須藤蓮さんは1996年生まれの26歳。
一体どうしてこんな時代色を描き出せるのか、
全くもって驚異的というほかありません。

62分という短さの中に、様々な要素が凝縮されていて、見事でした。

 

<WOWOW視聴にて>

「逆光」

2021年/日本/62分

監督:須藤蓮

脚本:渡辺あや

出演:須藤蓮、中崎敏、富山えり子、木越明

 

時代表出度★★★★★

感情描写★★★★★

満足度★★★★★