映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

FOUJITA

2015年12月06日 | 映画(は行)
本当は知りたい、フジタの心情



* * * * * * * * * *

1920年代、エコールド・パリの寵児、藤田嗣治=レオナール・フジタのストーリーです。
フジタは好きな画家。
でもそのフジタをオダギリジョーが演じるというのに始めは驚きました。
私の中のフジタは、もっと年輩のイメージだったもので・・・。
しかし当然その年輩のフジタにだって若い頃はあったはずで・・・、
ちょうどその20年年代にパリに渡ったフジタは、まさしく若かったのです!



彼の描く乳白色の肌の裸婦は、パリでも非常に注目を得ました。
日本の浮世絵のような雰囲気もあるその作風に、
パリの人々はどこか異国の風を感じたのでしょう。
フジタのオカッパ頭に丸メガネの独特の風貌もまた、狂乱のパリでは目立ったでしょうね。
本作は、フジタ本人の心情には肉薄せず、淡々と状況を描写していきます。
狂乱のパリでのどんちゃん騒ぎのさなかでも、
どこか覚めた目を伺わせるフジタは
実のところ何を見つめていたのか、本作では謎のまま。



そして作品は後半、1940年代、日本でのフジタを描きます。
ナチスに蹂躙される寸前のパリから、フジタは帰国していました。
日本も戦時下。
フジタは5人目(!)の妻・君代(中谷美紀)とともに田舎に疎開しています。
そして、戦争協力画を描く。
その作風は、すっかりヨーロッパ風。



そもそも本作の監督、小栗康平氏は、
パリの裸婦と戦時中の戦争協力画のその手法のあまりの違いに驚き、
本作を手掛ける気になったのだといいますから、
パリと日本半分ずつのフジタを描く意味はなるほど、それで納得できます。
しかし、戦争協力画を描くフジタの奥底の心情にもまた肉薄しないまま、
淡々と描写は続きます。
・・・正直言ってこのあたりでもう、眠気が差してきました。



フジタを知ってる方なら、この“戦争協力”のために
彼のその後の人生が大きく変わって行くことも知っています。
そして、本当はその時の彼の心情をこそ知りたいという気持ちが大きいのではないでしょうか。
少なくとも私はそうです。
しかし、本作ではそんなことには触れません。
結局のところ、フジタを知る人にも、知らない人にも、
欲求不満が残ってしまうという作品になっているように思います。
色調が抑えられたその映像は美しかったのですけれど・・・。
これが芸術だ、と言われたらもう、私には返す言葉がありません。



フジタをよく知らないけれど、もう少し良く知りたい方はこちらを・・・→ 藤田嗣治 異邦人の生涯

「FOUJITA」
2015年/日本/126分
監督:小栗康平
出演:オダギリジョー、中谷美紀、アナ・ジラルド、アンジェル・ユモー、マリー・クレメール

静謐度★★★★☆
満足度★★☆☆☆


最新の画像もっと見る

コメントを投稿