映画とYouTubeと
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「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」
新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。
ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。
受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応
―作品の質や価値は何をもって測られるのか。
私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。
朝日新聞連載、デビュー10年にして放つ新世代の長編小説。
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映画が大好きで、映像に関わる仕事がしたいと思う2人の青年の物語です。
2人は大学時代に組んで、新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞。
そしてその卒業後、1人は名監督に弟子入り。
もう1人はYouTubeでの発信、という全く別の道を歩み始めます。
映画監督を目指す尚吾は、YouTubeなど邪道だと思っています。
どんなド素人にでもできてしまう、映像も内容も適当なもの・・・。
でも映画は、特に新人監督の作るような作品は、
その作品作りのための努力や労力に反し、
見る人がごくごく限られていて、一般の人には興味も持たれない。
一方、YouTube作成の道へ進んだ紘はその作品がバズり、ちょっとした話題になります。
見る人の数で言えば、それこそ映画の比ではない。
けれど、数多く更新しなければならないことで、どうしても作り方が雑になってしまう。
双方のやりたいことと、その限界の間で、逡巡する若い2人。
映画もYouTubeもどっちも嫌いではない私としては、
イヤ、やっぱり見るための目的が双方違うからなあ・・・と思うのです。
YouTubeには「知りたいことを知る」、「見たいものを見る」ためのツールとして私は捉えています。
人にもよるのかもしれませんが。
そして映画には「ドラマ」を求める。
だから、当人がどっちをやりたいのか、ということなのではないかなあ・・・
という気がするのですが。
どちらも名を上げるための手段というのであれば、なおさら違う気もするし。
本作、今時のテーマとして着眼点は面白いのですが、
双方の「思い」の描写がくどくどしすぎていて、
逆にピンとこない感じがしてしまいました。
「スター」朝井リョウ 朝日文庫
満足度★★★☆☆
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