映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

奪還者

2016年06月09日 | 映画(た行)
恐るべき世界



* * * * * * * * * *

世界経済の崩壊から10年後の世界。
ありうるかもしれない近未来、オーストラリアが舞台です。



オーストラリアは、鉱物資源を求める男たちの無法地帯と成り果てています。
何もない埃っぽい広大な大地を、
車の中から途方に暮れたようにただ眺めている男、エリック(ガイ・ピアース)。
彼はすべてを失い、唯一の財産は車だけという状況にあるようなのです。
ところが、その車がヘンリー率いる強盗団に奪われてしまいます。
エリックは車を奪還しようと、執拗に彼らの後を追いますが、逃げられてしまいます。
しかしその後、強盗団の仲間で、重傷を負い兄ヘンリーに見捨てられた
弟レイ(ロバート・パティンソン)を拾い、助けます。
レイのおかげで強盗団の行先がわかり、
二人はヘンリーらの元を目指すことになるのですが、
この二人に奇妙に友情めいたものが芽生え始めるのです。



エリックはあえて「兄がまだ生きている弟を見捨てた」と
レイが兄を憎むように仕向けていますね。
ちょっとずるい。
それも車を取り戻すための手段なのですが、
レイは少し幼いところがあって、自分を助けてくれたレイを簡単に信じてしまい、なついてしまう。
もともと他人など信じないエリックも、なつかれると悪い気はしない、
といったところでしょうか。



この血も涙も乾き果てたような土地で、
この二人の友情が希望を見出すのかといえば、否!
あくまでも殺伐とした世界はそのままあり続けます。
紙幣が価値を失ったのと同様に、
人の命さえも価値を失い、人々は信じるべきものも見失っている。
そしてラストで、エリックが自分の車にこだわり続けていた本当の理由が分かるのですが・・・。
これは救いなのでしょうか。
それとも、人の命よりも大事なものがすり替わってしまっているという皮肉なのでしょうか・・・。
答えはありません。
恐るべき世界。



奪還者 [DVD]
ガイ・ピアース,ロバート・パティンソン,スクート・マクネイリー,デヴィッド・フィールド
ポニーキャニオン


「奪還者」
2013年/オーストラリア・アメリカ/103分
監督:デビッド・ミショッド
出演:ガイ・ピアース、ロバート・パティンソン、スクート・マクネイリー、デビッド・フィールド
殺伐度★★★★★
満足度★★★☆☆


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