映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「9条どうでしょう」 内田樹 他

2014年07月07日 | 本(解説)
今こそ!

9条どうでしょう (ちくま文庫)
内田 樹,平川 克美,町山 智浩,小田嶋 隆
筑摩書房



* * * * * * * * * *

「改憲論議」の閉塞状態を打ち破るには、
「虎の尾を踏むのを恐れない」言葉の力が必要である。
四人の書き手によるユニークな洞察が満載の憲法論!


* * * * * * * * * *

本書は2006年に単行本として出されたもの。
先の安倍晋三内閣のときで、
「教育再生会議主導で『愛国主義教育』が導入され、
改憲が政治日程に登ってきた頃」といいます。


そして今、これをテーマにするにはもはや手遅れの感もありますが、
集団的自衛権行使の容認が閣議決定されてしまいました。
安倍さんはよほど戦争がやりたいのでしょうか。
彼自身の思想が一貫していることは確かですが、
その方向性はどうにも賛同しまねます。


今はまだ「改憲」という話までは行っていませんが、
8年前の9条論が今でも通用するのかどうか、
それを確かめたくて手にとってみました。


第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない。



この9条については、これまでもあらゆる場所で云々されてきたわけですが、
本書では、内田樹、小田嶋隆、平川克美、町山智浩、この4人の論客が、
絶対にあるに違いない"批判・非難"を恐れず、持論を展開しています。


つまりはまあ、どなたも、憲法は変えてはいけない、けれど自衛隊はこのままに。
ということですね。


憲法というのは理念であって、理想である。
「私達は戦争をせず、平和を守る。」
これが私達が掲げている理想。
・・・けれど現実には「戦わず」に済まないこともあるのかもしれない。
でも、それを想定してどういう時には戦えて、どんな時に戦うことができない
などと明文化すべきではない。
それはあたかも「殺人を犯してはならない」という法に
「どんな時になら殺人を犯しても良いのか」などと条件付けることと同じ
・・・という内田樹さんの考え方は、説得力があると思いました。
同様のことを他の方々も述べています。


この度の集団的自衛権云々の件は、
とりあえずは憲法自体はそのままですが、
解釈の変更ということで、
「どういう時になら武力を行使してもよい」ということを規定しようとしているわけです。
・・・これは極めて危険ではありますまいか。
世間では批判の声が高まっているというのに、
平気で押し通す安倍氏の図太さ、(と言うより無神経?)
・・・しかし政治というものはこういうことなんですよね。
選挙で自民党を選んだ人が多かった結果です・・・。


本作、いつものごとくチョッピリひねった言い方をする内田樹氏の文章が最も緊張を要しますが、
他の方のはとてもわかりやすく、すんなり入ってきます。
今読んでも十分その論は通用しますので、是非一読をお薦めします。
そしてやっぱり、九条は堅持しましょう!!


中で、小田嶋隆氏がどうしても改憲するというのなら、
こういうのはどうだろう・・・と案を出しています。
先に上げた条文の最末尾に「(笑)」と付けるだけ。

<はいはい、無理なのは重々承知、
自衛隊とのねじれもありますよね~。
でもマジで、本気で武力を持たないで平和を守っていきたいと
思ってはいるわけなんですよー。
そこの所、察してね・・・。>

くらいの気持ちが入っているというわけ。
私、これがすごく気に入ってしまいました。
何なら、「(^_^;)」←こういうのでもいい。
末尾に。


「9条どうでしょう」内田樹他 ちくま文庫
満足度★★★★☆


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2 コメント

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新しくなりましたね (パール)
2014-07-07 20:23:31
集団的自衛権行使の容認、すごく胡散臭ささを感じています。
正面から、憲法改正を世に問うわけでも、正当な手続きを経て憲法を改正しようとするわけでもない。
解釈論みたいなことを文章化すると、誰かの恣意的な文言が入ってしまう気もします。

たんぽぽ様が、こうして取り上げてくださることで、ひとりでも、おかしいよねって思う人が増えていく…声を上げる人が増えていく…ことは大切なことだと思います。

憲法第9条にノーベル平和賞を! 
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Unknown (たんぽぽ)
2014-07-08 20:31:10
>パールさま
今さら私が何を言っても・・・とは思うのですが、
とりあえず、この本は読みやすくわかりやすいので、できるだけ多くの方に読んで欲しい!!と切に思います。
9条のノーベル平和賞もいいですが、世界遺産にという話もありましたね。文化遺産として、「永久に」守り通したいものです。
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