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「爆笑問題と考えるいじめという怪物」太田光

2013年08月02日 | 本(解説)
死ぬ勇気より、逃げる勇気

爆笑問題と考えるいじめという怪物 (集英社新書)
太田 光,NHK「探検バクモン」取材班
集英社

 
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子どもの自殺をきっかけに、
過去に幾度となく、いじめは社会問題となっている。
どうして悲劇は繰り返されてしまうのか。
そもそも、なぜいじめは起きてしまうのだろう?
いじめられたことのある子どもたちや、
"いじめ"を起こさない学校を、
爆笑問題がNHK「探検バクモン」スタッフとともに現場取材、
その深層を探っていく。
さらに、尾木直樹氏らの専門家、いじめを乗り越えたゲストたちと徹底討論。
いじめに対処する方法について真剣に議論する


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この本は、2012年11月にNHKで放映された
「探検バクモン いじめ×爆笑問題」をまとめたものです。
ちょうど大津市中学校でのいじめによる自殺報道が盛んに行われていた頃。
今はそれも又下火になりつつありますが・・・。
おそらくいじめが減少したということではない。
やはり同じようなことがどこかで起こっているであろうことは想像に難くありませんが・・・、
本当にどうしていじめはなくならないのでしょう。


この本の中で、尾木ママこと尾木直樹氏は言っています。
今の学校は、人材育成の「機関」になってしまっている。
人材を画一的に効率よく育成する「機関」であると。
そんな中では一人ひとりの個性が押し殺されて抑圧されていく・・・、
ということのようです。
そうではない学校の例として、
この本の中で「東京シューレ葛飾中学校」が紹介されています。
国の「構造改革特区」の制度を利用し、
不登校を経験した児童であることを入学の要件としているフリースクール。
いじめを受けた経験のある子も多いようです。
画一性を廃し、一人ひとりをそのまま受け入れてくれるこの学校で、
子どもたちはのびのびと過ごしているようです。
出たくない授業は出なくてもいい等、
人によっては「甘やかし」と思う面もあるかもしれません。
ただ、こんなふうに、学校にも色々あっていいのではないかな・・・という気はします。
友人関係で神経をすり減らすよりも、
まず「学ぶ」ことの楽しさを教えてくれる学校があればいいな。
・・・そのためにはやはり点数で子供の優劣をつけてしまうようなやり方を
まず見なおすべきなのだけれど・・・。
そのためには社会の仕組みから変えなければなりません。
う~む、難しい・・・。


それから、自殺についてですが、
太田光さんは、自殺はいじめをした子に対しての「復讐」の意味もあるのでは?と述べています。
確かに、このように大々的に報道されれば、
いじめた側のダメージはかなり大きいですからね。
でも死んでしまってはそれを見届けることもできないじゃないですか。
私はこの事件が報道された時に思ったのです。
これは「自殺」をしたからこのように大きくテレビのニュースで扱われたわけで、
いじめを受けた段階で学校に訴えてもさほど問題にはされなかったのではないか。
ましてや、マスコミに取り上げてもらおうとしても、
たぶん無視されてしまうでしょうね。
あまりにも日常茶飯事なので・・・。
命をかけなければ話題にもならない・・・というのは、
間違っているのではないか・・・。
けれど、それが悲しい現実です。


でも、同じような問題で自殺を考えている子がいたとしたら私は言いたい。
ちょっと待って。
死ぬ気になればなんでもできる。
まず、逃げ出しなさい。
学校なんか行かなくていい。
死ぬだけの勇気があるのなら、
まず逃げて、それから、他の自分のいることが出来る場所を探そうよ。
フリースクールでも何でもいい。
自分らしくいられる場所で、のびのびと必要なことを学んで、力を蓄えよう。
そして自分らしい生き方を探して、幸せになろう!! 
自分を好きになって豊かな人生を送ることこそが、
いじめた奴らに対する最大の復讐だよ!!
うん、そうした子に掛ける言葉はいくらでもありそうな気がする。
けれど、いじめる側の心の貧しさをどうしたら救えるのか。
私には想像がつきません。
いじめられている子をどう救うか、よりも、
いじめる子をどう救うのか。
これからはもっとそのことを論じるべきなのではないかと思います。

「爆笑問題と考えるいじめという怪物」太田光 NHK「探検バクモン」取材班 集英社新書
満足度★★★☆☆


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