助力を得ても、この仕事を続けたいと思う
* * * * * * * * * * * *
小さな活版印刷所「三日月堂」。
店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった言葉。
仕事を続ける中で、弓子が見つけた「自分の想い」と、「三日月堂の夢」とは――。
* * * * * * * * * * * *
本巻ではいよいよ、三日月堂のこれまで動かすことができなかった
古い大型活版印刷機(平台)が始動をはじめます。
平台のことに詳しい悠生の力を借りて。
はい、前巻からなんとなく予感がありました。
弓子さんと悠生のこと。
本巻でのメインとなるのは、古書店店主・水上の本。
彼がこれまでに書店のリーフレットに寄せていたコラム「雲日記」の文章を厳選して、
一冊の本にしようと言うのです。
活版印刷で本を作るとなると、活字を拾って組むだけでもかなりの手間と時間を要する訳で、
到底弓子一人でできるものではありません。
しかも、水上は癌で余命宣告を受けており、何としても彼が存命中に完成させたい。
というわけで、三日月堂を取り巻く様々な人々の助力を得て、本作りが始まります。
そして弓子は思う。
自分はやっぱりこの仕事が好きなのだ。
本を作ることは、今後も続けていきたい。
でもそのためには悠生の力が必要だ・・・。
自分の仕事の方向と生きる方向が一致するというのは、
とても貴重で幸福なことだと思います。
ラストは、読んでいても思わずにやついてしまう、この二人らしい様子なのでした。
この作品は、様々な人がその都度主人公となって、外側から三日月堂の弓子を見る、
という構成がほとんどなのです。
しかし本巻の最終章はズバリ、弓子自身が語り手です。
それでストーリーとしては一応ここで一区切り。
でも続きの本も出ているので、まだ楽しめそうです。
本巻での三日月堂のお仕事。
★小口木版を交えた星座盤
★街の木のイラストマップ
★「雲日記」の本
「活版印刷三日月堂 雲の日記帳」ほしおさなえ ポプラ文庫
満足度★★★★★
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます