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ディリリとパリの時間旅行

2020年06月25日 | 映画(た行)

ベル・エポックのパリも良し。テーマ性も良し。センスがなお良し。

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19世紀末~20世紀初頭、ベル・エポック期のパリを舞台とした、とびきりステキなアニメです。
ニューカレドニアからやって来た少女ディリリは、
パリで出会った最初の友人オレルとともに、ベル・エポックのパリを楽しみます。
しかし、その時パリでは少女誘拐が多発しています。
二人はこの事件の真相解決に挑むことに・・・。

本作の邦題がちょっと疑問です。
物語の舞台がベル・エポックのパリというだけで、
ディリリがタイムトラベルをするわけではない。
まあ、時間旅行をしたかのように当時のパリの様子を楽しめる、
という意味ではあるのかもしれませんが。



ピカソ、モネ、ロートレック・・・
キュリー夫人、パスツール・・・
エッフェル塔、オペラ座、ムーランルージュ・・・
当時のトピック的人物や建物をめぐるのがなんとも楽しい!!

でも本作のテーマは、そういう当時の時代性を再現することの他にもう一つ。
ズバリ、性差や肌の色の違いで人を差別し、見下すことの
愚かさ、おぞましさ、それを言っています。
ディリリはニューカレドニアからやって来たのですが、
実は現地の人と白人とのハーフなのです。
そのため故郷においては「肌の色が明るい」と差別され、
ここパリにおいては「肌の色が濃い」と差別されるのです。
パリの街にはそんな風に彼女を見下す人もいますが、
オレルのように全く気にとめない者ももちろんいます。
そして、ここで起きている少女誘拐事件は、
女性の社会進出を快く思わない者たちの、まるでKKK団のような結社によるもので、
そこではなんともおぞましい行為が行われているのでした・・・。
自分とちがう者を、ただそれだけで差別し、見下し、
その存在すらを排除しようとする頑迷な者たち。
いつの世にもそういう者たちはいるのです。
ちょうど今、人種差別の問題がまた大きく取り上げられているので、
本作もぜひ多くの人に見てもらいたいと思いました。

さすがフランスの色使いが、ため息をつきたくなるほどにステキなのです。
重いテーマながら、冒険心をくすぐるシーンもあります。
少女ディリリの強い自尊心と勇気に涙が出そう。
まさに、大人が見るべきアニメです。

<WOWOW視聴にて>
「ディリリとパリの時間旅行」
2018年/フランス・ドイツ・ベルギー/94分
監督・脚本:ミッシェル・オスロ

ベル・エポック再現度★★★★★
差別のテーマ性★★★★★
満足度★★★★★

 



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