家族だって、しょせん他人
* * * * * * * * * * * *
澪子は41歳、バツイチ。
"人並み”の幸せを夢見ていただけなのに、もろく崩れる。
家財道具は旦那に持っていかれ、お金もない。
そんな中、姉の香波が金の無心にやってくる。
香波は澪子の状況を知り、久しぶりに実家で暮らすことを提案する。
そして10年ぶりに母親が一人で住む家に戻ったのはいいのだが、
娘たちの出戻りを笑い飛ばす始末。
がさつな母に傷つく澪子。
そしてある日、家で怪しい人影を発見するのだが?!
* * * * * * * * * * * *
お見事に情けない家族の様相が描かれます。
澪子41歳。
北海道の右上の方の町(!?)に住む。
ある日突然、夫が離婚を言い渡して出て行ってしまった。
ずっと専業主婦で職もない。お金もない・・・。
呆然と何をする気もなく日々を過ごしているところへ、
東京へ行っていた姉・香波が現れ、お金を貸してほしいという。
貸すお金などあるはずもなく、
姉の提案で、この町を引き払い、札幌の実家へ帰ることに。
実家にいるのはもう70を過ぎた母親一人のみ・・・と思っていたら、
彼女ら2人が戻る少し前に、兄ノーリーが戻って来ていた。
しかし彼はずっと部屋に引きこもっていて・・・。
人生にしくじって実家へ戻ってきた兄妹3人を、母親は笑い飛ばす。
いや、笑い事ではないのだけれど・・・。
これでもかというくらいにどん底に思えるそれぞれの状況。
でも、とりあえずこうして「帰る」場所があってよかったね、と思ってしまいます。
もっとも、澪子は母親を苦手に思っていて、
二度と戻りたくないと考えていたようなのですが。
というのも、母はがさつで人が気にするようなこともズバズバと口に出してしまう。
それでどれだけ自分が傷ついたか・・・。
しかしそんな母が、自分がいると皆(澪子)が嫌がるから・・・と思い、
日中、特に用事もないのに出かけて夜まで時間を潰していたりするのです。
改めて澪子は考える。
自分は母親を嫌いだったのだろうか・・・?
ちょっと苦手ではあったけれど、嫌いというわけでもないのだ。
そして母はいう。
「家族だってしょせん他人。だから好きでも嫌いでもいい。」
家族だって、しょせん他人。
・・・うむ、そうですね。
家族という血のつながりがあったとしても、それは自分ではない、他人。
そう割り切ることで救われることはありそうです。
こんなバラバラの人々が、読んでいるうちに
「でもやっぱり家族でしょ」と、思えてきてしまうのがおかしい。
そして私はここのお母さんがとても好きです。
仕事が見つからずぶらぶらしているいい年した3人の子どもたちを見ても、
決してうろたえず、小言も言わず、
「そのうちどうにかなるっしょ」と気にしない感じ。
北海道の母としては、そうあるべきという感じがします!
図書館蔵書にて
「玉瀬家、休業中。」まさきとしか 講談社
満足度★★★★☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます