「たすけて」のメモから始まるあれこれ
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コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む杉浦草は、
秋のある日、日課の散歩の途中、
<たすけて>と書かれた一枚のメモを拾う。
助けを求めているのは、いったい誰なのか。
日常に潜む社会のひずみを炙り出しつつ、甘いだけではないお草さんの言葉が、
読む人の背中を押してくれる吉永南央の大人気シリーズ。
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吉永南央さんの小蔵屋シリーズ。
何気ない平和な町ではありますが、ときおりお草さんや住民たちの心を悩ませる
ちょっとした出来事や事件が発生します。
それを紐解いていくお草さん。
この度は、お草さんが道ばたで「たすけて」と書かれた小さなメモ用紙を拾います。
誰がどんな状況で誰に向けて書かれたのかも分からない。
そんな時に近所の女子中学生が行方不明となり、
お草さんは、もしやその少女が残したメモ?と思うのですが、
まもなくあっさりとその少女が発見されます。
では一体誰が・・・?
再びそのメモの落ちていた当たりを鋭く観察して歩くお草さんは、
とある家の玄関で倒れている老女を発見。
かろうじてその老女は命を取り留めたのですが、
ではそのメモは彼女が書いたものだったのか・・・?
その後、物語には驚きの進展があります。
ご近所のことは、分かっているようで分からない・・・。
また、近所の中学校のくだらなくも強引な校則と、
それを押しつけようとする右翼的思想の校長のことについてもテーマの一つ。
一時行方不明になった少女は聖(ひじり)という、
自由闊達で意志の強いベリーショートの女の子。
この物語にさわやかな風を吹き込みます。
意外とお草さんとも気が合う。
今後もまた登場してほしいです。
小蔵屋店員の久美さんは、いよいよ恋人一ノ瀬と同居を始めたのですが、
どうにも順風満帆ということにはならない・・・。
お草さんとのお店のパートナーとしてはサバサバとしてすごく好きなのだけれど、
恋愛に関して彼女は何かと「めんどくさい」女であるようです・・・。
友人のままの方がよさそう・・・?
などと下世話なことまで考えてしまう、そんなシリーズです。
「月夜の羊 紅雲町珈琲屋こよみ」吉永南央 文春文庫
満足度★★★.5
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