二重の成長物語
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狙われた大学公印、学生自治会長選挙の不正疑惑、
大学御用達の定食屋の後継者問題、女子生徒の洋服盗難、
学生への不公平な単位付与―
森川とハンナが辿り着いた、事件の裏にある切なくて苦い真実の数々とは?
優しい涙が溢れる傑作!
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大学内のちょっとした事件を描きます。
就職活動で、「文学」の出席日数がどうしても足りなくなってしまった佐藤大地は、
担当教員である森川の元を訪ね、どうにか単位をくれるように頼もうとします。
ところが、森川はちょっと変人(?)で、
研究室にびっしりとある本の中から、
森川が一番好きな本を当てれば単位をやる、というのです。
せっかく就職が決まったのに、ここで卒業し損ねるわけに行かない・・・、
というわけで、大地の研究室通いが始まります・・・。
という出だしで始まる本作、
大地のストーリーかと思ったら、どうやら主役は森川の方だったようで、
結局森川の成長物語でもあった・・・。
面白く読めたのですが、少し物足りないところもありました。
大地の成長ストーリーなら納得できますが、
こういう場合、指導の立場の教員はもっとクールな大人であって欲しい。
森川も悪くはないのだけれど、イマイチ大人になりきらないというか・・・
結局二重の成長物語であり、探偵役も大地であったり森川であったり、
定まらないのもすっきりしない。
猫がでてくるのはいいけれど、猫に依存しすぎでもある。
大学内のスパイ事件は、なんだか子供だましみたい。
ということで、ちょっと食い足りなかった感じです。
<図書館蔵書にて>
「ハンナのいない10月は」相川英輔 河出書房新社
満足度★★★☆☆
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