人の期待通りの人生なんて・・・
* * * * * * * *
イタリアのとびきり楽しく、また見応えのある作品。
南イタリアの老舗パスタ会社社長の一家を描きます。
この家の次男トンマーゾは、ローマの大学に入り
家族には「経営学部」と偽り、「文学部」を卒業。
小説家志望です。
会社を継ぐ意志は全くないので、兄の新社長就任のディナーで
「自分はゲイだ」とカミングアウトして勘当されようともくろんでいる。
大変に保守的な土地柄であり、家族なので、
ゲイが受け入れられるとは思えない。
しかし、そのディナーでなんと兄アントニオが先に「自分はゲイだ」といってしまう。
会社を継ぐことになった兄ですが、実は自分を偽り続けるのがいやになっていたのです。
アントニオは怒り狂った父に追い出され、
告白をし損ねたトンマーゾが会社の経営を背負うことに・・・。
父親は興奮のあまり倒れてしまったので。
・・・というあたりを予告編で見て、
これはトンマーゾがパスタ作りに生き甲斐を見いだす物語なのか?と思っていたのですね。
映画の題名もそんな雰囲気ですし、
ちょっぴりグルメ映画っぽいシーンなどもあるのではないかと。
けれど、いい意味で予想は裏切られました。
ここのパスタ会社をここまで大きくしたのは、一重にここのお祖母さんの功績です。
映画の冒頭、ウエディングドレスをまとった美しい女性が
廃墟のような教会で自殺しようとするシーンがあります。
それこそがここのお祖母さまの若い頃のことだと次第にわかってくるのですが、
彼女にとっては実は望まない結婚だったのですね。
そんなお祖母さまが、自分の子供や孫たちに向ける思い。
それは、ゲイでも何でもいい。
家族や周りの人期待や思惑なんて気にしなくていい。
自分のやりたいことに挑戦して、自分の道を行きなさい。
そういうメッセージなのです。
彼女は孫が自分の道を行く決心をしたことを見定めてから、
最後に自分自身のしたいことに挑みます。
だからこれはグルメストーリーではなくて、生きる勇気をくれるドラマ。
ここの家の人たちはお手伝いさんに至るまで、皆個性豊かで楽しめます。
けれど誰もが実は満たされない思いをそれぞれが抱えている。
ゲイの男性を好きになってしまう女性・・・というのも結構切ないですね。
ゲイだろうとなんだろうと、人間的に魅力のある人は、やっぱり好きになりますよね。
「報われない恋は終わらないのよ」というお祖母さまの言葉がまた、重みがあって温かい。
そしてまた、なんだかこの作品を見ていたら、
男性同士のLOVEにもさほど違和感がないような・・・。
トンマーゾの“彼”も、いい感じだったのです。
私は、兄アントニオが弟の告白を聞いたときの表情がすごく好きでした。
え?面白いことを聞いたと、揶揄するようでもあり、
いたずらっぽくもあり、そしてなんだか優しくもある。
うん。ステキです。
今作の原題は「Mine Vaganti」
これは映画の中でお祖母さまのあだ名となっている「歩く地雷」のことですね(多分)。
だからやはり、この作品の芯となるのはこのお祖母さまなのですが、
「あしたのパスタは~」という邦題にしてしまったことで、
著しく作品のイメージも変わってしまったというわけです。
アルデンテのように、歯ごたえのある作品・・・と言う方はいますけれど。
それにしても、もう少し納得のいく邦題にできなかったのか、
やや残念なところではあります。
「あしたのパスタはアルデンテ」
2010年/イタリア/113分
監督:フェルザン・オズペテク
出演:リッカルド・スカマルチョ、ニコール・グリマウド、アレッサンドロ・プレツィオージ、エンニオ・ファンタスティキーニ、イラリア・オッキーニ
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イタリアのとびきり楽しく、また見応えのある作品。
南イタリアの老舗パスタ会社社長の一家を描きます。
この家の次男トンマーゾは、ローマの大学に入り
家族には「経営学部」と偽り、「文学部」を卒業。
小説家志望です。
会社を継ぐ意志は全くないので、兄の新社長就任のディナーで
「自分はゲイだ」とカミングアウトして勘当されようともくろんでいる。
大変に保守的な土地柄であり、家族なので、
ゲイが受け入れられるとは思えない。
しかし、そのディナーでなんと兄アントニオが先に「自分はゲイだ」といってしまう。
会社を継ぐことになった兄ですが、実は自分を偽り続けるのがいやになっていたのです。
アントニオは怒り狂った父に追い出され、
告白をし損ねたトンマーゾが会社の経営を背負うことに・・・。
父親は興奮のあまり倒れてしまったので。
・・・というあたりを予告編で見て、
これはトンマーゾがパスタ作りに生き甲斐を見いだす物語なのか?と思っていたのですね。
映画の題名もそんな雰囲気ですし、
ちょっぴりグルメ映画っぽいシーンなどもあるのではないかと。
けれど、いい意味で予想は裏切られました。
ここのパスタ会社をここまで大きくしたのは、一重にここのお祖母さんの功績です。
映画の冒頭、ウエディングドレスをまとった美しい女性が
廃墟のような教会で自殺しようとするシーンがあります。
それこそがここのお祖母さまの若い頃のことだと次第にわかってくるのですが、
彼女にとっては実は望まない結婚だったのですね。
そんなお祖母さまが、自分の子供や孫たちに向ける思い。
それは、ゲイでも何でもいい。
家族や周りの人期待や思惑なんて気にしなくていい。
自分のやりたいことに挑戦して、自分の道を行きなさい。
そういうメッセージなのです。
彼女は孫が自分の道を行く決心をしたことを見定めてから、
最後に自分自身のしたいことに挑みます。
だからこれはグルメストーリーではなくて、生きる勇気をくれるドラマ。
ここの家の人たちはお手伝いさんに至るまで、皆個性豊かで楽しめます。
けれど誰もが実は満たされない思いをそれぞれが抱えている。
ゲイの男性を好きになってしまう女性・・・というのも結構切ないですね。
ゲイだろうとなんだろうと、人間的に魅力のある人は、やっぱり好きになりますよね。
「報われない恋は終わらないのよ」というお祖母さまの言葉がまた、重みがあって温かい。
そしてまた、なんだかこの作品を見ていたら、
男性同士のLOVEにもさほど違和感がないような・・・。
トンマーゾの“彼”も、いい感じだったのです。
私は、兄アントニオが弟の告白を聞いたときの表情がすごく好きでした。
え?面白いことを聞いたと、揶揄するようでもあり、
いたずらっぽくもあり、そしてなんだか優しくもある。
うん。ステキです。
今作の原題は「Mine Vaganti」
これは映画の中でお祖母さまのあだ名となっている「歩く地雷」のことですね(多分)。
だからやはり、この作品の芯となるのはこのお祖母さまなのですが、
「あしたのパスタは~」という邦題にしてしまったことで、
著しく作品のイメージも変わってしまったというわけです。
アルデンテのように、歯ごたえのある作品・・・と言う方はいますけれど。
それにしても、もう少し納得のいく邦題にできなかったのか、
やや残念なところではあります。
「あしたのパスタはアルデンテ」
2010年/イタリア/113分
監督:フェルザン・オズペテク
出演:リッカルド・スカマルチョ、ニコール・グリマウド、アレッサンドロ・プレツィオージ、エンニオ・ファンタスティキーニ、イラリア・オッキーニ
お兄さんまでだったとは驚きでした
街中でトンマーゾの母親と叔母が、噂話で揶揄され言い返すシーン
暮らしにくい町なんだなぁ、というのと、やるじゃない、って両方の思いに複雑になりました
TVなどではもはや普通のことも、実際身の回りに起こったら、それはやはり大事件。
多分私の住んでいるあたりでも同じかもしれません。
開き直る強さと、そして理解してくれる家族とか、友人、そういうのが大事なんでしょうね。
ここのお祖母さまには拍手を送りたくなります。望まない結婚ではありながら、相当やりたいことをやった方なのでは? だからこそ、歩く地雷なんですよね。お祖母さまの一生も相当のドラマになりそうで、私はそれが見たいです。