理不尽な「差別」というもの
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島崎藤村による名作でありますが、
これまでにも1948年・木下恵介監督、
1962年・市川崑監督によって映画化されています。
日本人としては知っておきたい内容です。
時代は明治。
日露戦争が行われている頃です。
父から、自身が被差別部落出身である出自を隠し通すよう、
強い戒めを受けていた瀬川丑松(間宮祥太朗)。
今は地元を離れ、小学校の教員として勤務しています。
子どもたちに慕われる丑松ですが、出自を隠していることに悩んでいます。
また丑松は、下宿先の氏族出身の女性、志保に恋心を抱いているのですが、
それも自分の出自のことがあるので、気持ちを打ち明けることもできません。
そんな彼は、被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎に傾倒していきます。
しかしやがて、丑松の出自のことが周囲に疑念を抱かれるようになり、
学校内の立場も危うくなっていきます。
まず始めに、丑松が父から
「どんな相手にも気を許すな、絶対に出自のことは話すな」
と強く言い渡されるシーンがあります。
そのことが知られれば、もう周囲からは人間扱いされない、
卑しい身分として蔑まれ、忌み嫌われることになるからです。
明治の世になり「四民平等」が歌われながらも、根強く残る部落民への差別。
見ている私も、いつこの秘密が露見するかと、ついビクビクしながら見ていました。
昨今、性的マイノリティや移民に対しての差別が取り上げられることは多いのですが、
この種のことが取り上げられることはあまりないように思います。
それは多分、なくなったからではなくて、
公に取り上げること自体がほとんどタブー化していて、
口にしないことで、ないことにしてしまおう
という意図があるのかもと思ったりします。
実は北海道は「同和教育」という言葉もあまり知られていません。
歴史の浅い北海道は被差別部落がないのです
(と思っているだけで実はあったのかもしれないけれど)。
北海道はむしろアイヌへの差別場問題がありましたし。
どこから流れてきたのかよく分からない北海道の人たちは、
あえて出自を探り合うことも少なかったのかも・・・。
ということで、こういうことがあった、あるいはある
ということを再認識しておく必要はあると思うので、有意義な作品ではあります。
それにしても、その出自のことだけでこんなにも悩み苦しむことになるというのが、
いかにも理不尽。
実は差別する側の人間性を問われることなのにね。
<WOWOW視聴にて>
「破戒」
2022年/日本/119分
監督:前田和男
原作:島崎藤村
出演:間宮祥太朗、石井杏奈、矢本悠馬、高橋和也、小林綾子、竹中直人、本田博太郎
差別度★★★★☆
満足度★★★★☆
だから同和教育への本気度も小さい。
なんでこんな差別があるのか理解できない。
要するに昔々に戦いに負けた部族を必死に下層に押し込めただけでしょうに。
自分よりも下層の人々を作り出すことで、安心したかったのだろうか?などと思ったりします。
コメントありがとうございます。