いなせな老人の昔語り
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嘘も真実も善きも悪しきも、すべてが詰まった江戸怪談の新骨頂!
江戸は神田の三島屋で行われている変わり百物語。
美丈夫の勤番武士は国元の不思議な〈火消し〉の話を、
団子屋の屋台を営む娘は母親の念を、
そして鯔背な老人は木賃宿に泊まったお化けについて、
富次郎に語り捨てる。
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三島屋百物語シリーズ第7巻。
「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」
従妹・おちかから聞き手を引き継いだ、富次郎の話の続きとなります。
本巻に収められているのは、「火焔太鼓」、「一途の念」、「魂手形」の3篇。
表題作「魂手形」では、冒頭で、
お嫁に行ったおちかが赤子を身ごもったことが明かされます。
すっかりお祝いムードで浮かれる三島屋の人々。
そんな中、百物語の語り手として現れたのが、
なんとも粋で、鯔背(いなせ)なご老人。
話は、この老人がまだ少年の頃の不思議なというか少し恐い話なのですが、
この老人が話すとちょっとユーモラスですらある。
富次郎は、この老人がすっかり気に入って、こんな風に年をとりたいなどと思うのです。
分かります。
私も本やテレビドラマに出てくるご高齢の女性を見て、
こんな風に年をとりたいなあ・・・と思うことが多いので。
でも考えてみたらもう十分に年をとっているはないか!
手遅れなんだわ・・・。
まあ、それはともかく、あまりにも恨みやつらみが残った死者は、
成仏できずに魂がこの世をさまようことになるというような、
暗く悲しい一連のストーリーも、
この老人の話す威勢のよい結末に、救われる思いがするのです。
が、しかし。
この世は何もかもいいことばかりではないのですね。
終盤少し不穏な人物(?)らしきものが登場。
幸福と不幸は裏表。
そんな中をなんとか折り合いをつけながら生きていくのが、
おちかであり、富次郎であり、わたしたちであるわけです。
おめでたいばかりでは終わらせない、これぞ、著者の心意気。
<図書館蔵書にて>
「魂手形 三島屋変調百物語 七之続」宮部みゆき 角川書店
満足度★★★★☆
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