映画と本の『たんぽぽ館』

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北の果ての小さな村で

2020年06月23日 | 映画(か行)

極北の地の人々や文化と、現代の暮らし

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グリーンランド東部、テニツキラーク、
人口80人の小さな村の小学校に赴任したデンマーク人教師、アンダース。
彼の体験を描く作品です。
本作は、サミュエル・コラルデ監督がこの地を気に入ってロケ地に選び、
その際、デンマークから新人教師が赴任すると聞き、
その青年を中心に据えて1年間の撮影に入った、という経緯でできたもの。
演じる教師も子どもたちも村人も、皆本人そのまま。
ドキュメンタリーとフィクションが融合したユニークな作品となっています。

赴任したてのアンダース。
子どもたちは言うことを聞かず騒ぎ立てるし、
村人は打ち解けず、自分を無視する。
故郷の父の期待に背いてまでここにやって来たものの、
全くうまく行かずに落ち込んでしまいます。
あるとき、一人の子どもが無断で休んだので、彼の家へ行ってみます。
すると彼は祖父と狩りに行っていたという。
学校よりも狩りが大事だと祖父は言うのです。
反発を覚えるアンダースですが、
しばらくこの村で暮らしていくと、だんだんわかってくるのです。



祖父が孫に教えていたのは、この厳しい自然の中で生きていく知恵、
そしてこの地の文化なのです。
孫は祖父と同じ狩人になりたいと思っている。
でも実のところ今は、アザラシの肉も毛皮もあまり高くは売れなくて、
狩猟で生計を立てるのは厳しくなってきています。
だから村の経済自体もなりたたなくなりつつある・・・。
子どもたちはやがてこの村を離れて都会の学校へ進む可能性が高い。
だからこそ、アンダースはデンマーク語を子どもたちに教えている。
けれどこの村で昔ながらの生き方をすることだってあってもいいし、それは大切なことでもある。
村の過去、文化、子どもたちの未来・・・。
いろいろと考えるべき事があって、都会人の単純な「教育論」では語れない部分がにじみ出てくる。
そんなステキな作品なのでした。



アンダースが村人たちと溶け込みはじめたのは、地元の言葉を覚え始めてからですね。
そりゃ、言葉の通じない人とは仲良くしたくてもなかなか難しいし、
都会風吹かした上から目線の人とは付き合いがたいですよね。



そして本作のもう一つの見所は、当たり前ながらこの極北の地の風景。
巨大な氷山の浮かぶ海、大雪原、オーロラ、シロクマの親子、鯨、犬ぞり。
何もかも素晴らしい・・・。
私は寒いのが苦手なので、住みたいとは思わないけれど・・・。
アンダース氏は今も村で教師を続けているそうです。


<Amazonプライムビデオにて>
「北の果ての小さな村で」
2018年/フランス/94分
監督:サミュエル・コラルデ
出演:アンダース・ビーデゴー、アサー・ザアセン

グリーンランドの大自然度★★★★★
村の文化を知る度★★★★☆
満足度★★★★☆

 



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