映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「新章 神様のカルテ」夏川草介

2020年06月16日 | 本(その他)

大学病院にて

 

 

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ベストセラーシリーズ。大学病院編始動!

 信州にある「24時間365日対応」の本庄病院に勤務していた内科医の栗原一止は、
より良い医師となるため信濃大学医学部に入局する。
消化器内科医として勤務する傍ら、
大学院生としての研究も進めなければならない日々も、早二年が過ぎた。
矛盾だらけの大学病院という組織にもそれなりに順応しているつもりであったが、
29歳の膵癌患者の治療方法をめぐり、
局内の実権を掌握している准教授と激しく衝突してしまう。
 舞台は、地域医療支援病院から大学病院へ。

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このシリーズ、本作を含めてもう5巻になっていたのですね。
好きな作品でしたが、私、2巻目までしか読んでなかったかと思います。
でもこの度、友人がこの本を貸してくれたので、中抜けで読みましたが、
さして不都合はなかったようです。

 

さて、常に職務に意欲的かつ真摯に取り組む内科医・栗原一止は、大学病院へ移り、
立場は大学院生ということで、薄給・重労働と、相変わらずブラックな環境で頑張っています。
医師としては9年目。
4年目や1年目、研修医などの後輩を指導する立場でもありますが、
当然ながら彼らからは信頼を得ています。
しかし、様々な医療小説にも表されているとおり、
大学病院というところはガチガチの組織で、
ただひたすら患者のためを思う一止の思惑にはいつも厚い壁が立ち塞がる。


本作にも様々な症状の患者が登場しますが、
中でもメインは29歳と言う若さで膵癌に冒された女性のこと。
既婚者で7歳の娘がいます。
実のところ治る見込みがない・・・。
それで彼女は最期まで家族と共にいたいと願い、在宅死を希望するのです。
一止は、極力その願いをかなえようとするのですが・・・。


私、先に上野千鶴子さんの「おひとりさまの最期」の本の中で、
在宅死のことをいろいろ学びまして、今でも希望すれば制度的には可能であるとわかっています。
でも、肝心の病院や医師が難色を示すというのも、本作を読んでよくわかりました。
良いテーマを取り上げてくれたなあ・・・と、しみじみしながら読みました。


友人たちや後輩、そして上司、様々な人々との関係性も、いつもながらいい感じです。
いや~なヤツと思っている人にも、それなりの思惑と正義があるのがいいですね。
ただ、いつも思うのは、奥さんのハルさんがいい人すぎて、
お人形のようで、どうにも存在感が薄いのです。
女はもっとズルくて腹黒いのですよ、夏川さん。


「新章 神様のカルテ」夏川草介 小学館
満足度★★★★☆

 



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