人々の分断を乗り越えて
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山里で1人暮らす、陶芸職人の神谷誠治(役所広司)。
一流企業のプラントエンジニアで、アルジェリアに赴任中の息子・学(吉沢亮)が、
婚約者ナディア(アリ・まらい果)を連れてやって来ます。
学は結婚を機に退職して、焼き物の仕事を継ぎたいと言います。
けれど、父・誠治はいい顔をしません。
一方、隣町の団地に住む、在日ブラジル人のマルコスが、
半グレ集団に追われて、誠治と学ぶに救われます。
マルコスは焼き物の仕事に興味を覚えます。
やがて、学とナディアはアルジェリアに戻り、
マルコスはさらにまた半グレ集団につけ狙われるようになりますが・・・。
私、本作はもう少しハートウォーミング的作品かと思っていたのですが、
とんでもない、シビアでショッキングな作品でした。
ブラジル人等の外国人ばかりが住む団地というのは実在して、
それがモデルになっているようです。
男達は朝出迎えの車に乗り合わせて工場へ向かう。
女たちは調度その頃に、夜の盛り場から帰ってくる。
冒頭で、そんな様子が映し出されます。
彼らは、一攫千金の夢を見て本国から日本へ渡ってきたのだけれど、
そんな話は全くの眉唾物・・・。
移民達が日本社会の中で受ける差別や偏見。
一行に変わらない低賃金。
マルコスはもうすっかり将来の夢を見ることも忘れています。
そんな外国人たちとなんのわだかまりもなく付き合い、助けようとするのが神谷父子。
なにしろ学は、アルジェリアの難民キャンプにいたナディアと結婚を決意し、
誠治は息子からその娘を紹介されても動じずに歓迎する。
なんと肝の据わった親子でしょう。
すべての日本人がこうであればよいのに・・・。
こんな親子なので、移民団地の人々と仲良くなるのも自然な成り行きなのであります。
それにしても終盤の展開はあまりにも意外で悲痛です。
アルジェリアは政情不安定な国で、
日本人が思う「話し合い」の通じるような人ばかりではない、ということか。
国際間の人々の分断は、全く単純ではありません・・・。
個人として出会えば、家族のようにもなれるのに・・・。
最後の誠治の行動が何しろすごくて、圧倒されました。
力のある作品ですね。
<シネマフロンティアにて>
「ファミリア」
2022年/日本/121分
監督:成島出
出演:役所広司、吉沢亮、アリ・まらい果、サガエルカス、ワケドファジレ、
中原丈雄、室井滋、佐藤浩市
分断度★★★★☆
ショッキング度★★★★★
満足度★★★★☆
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