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雑踏の中に蛍光オレンジのジャンプスーツの4人組。しかし、誰も振り向くことさえしない。彼らはの正体は!? そして、彼らに課された使命とは!?
「幽霊人命救助隊」 高野和明 文春文庫
浪人生、老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。
この4人が奇妙な断崖の上で出会います。
なんと彼らの共通点とは、自殺を図って死んでいるということ・・・。
そのためか、彼らは天国へも行ききれず、そこへ現れたとぼけた「神」に、天国へ行きたければ自殺志願者100人の命を救えといわれるのです。
新宿の街に降り立った4人組。
蛍光オレンジのジャンプスーツの背中にはRESCUEの文字。
しかし、彼らは幽霊ということで、普通の人にはその姿は見えません。
その声さえも、普通の人には聞こえない。
幽霊なのに空も飛べなくて、移動手段はてくてく歩くか、電車に飛び乗る、車にしがみつく・・・。
この世の物体は彼らには、ほんの少しも動かすことが出来ない。
・・・このような悪条件で、いったいどうやって自殺志願者を助けるのか・・・!
意地悪な「神」はそのノウハウも教えてくれず、彼らは試行錯誤を繰り返しつつ、いろいろなことを学んでいきます。
そもそも、まったく気が合いそうもないこの4人ですが、次第次第に気持ちが通じ合い、チームワークが作られていくのは読んでいて楽しい。
おっと、楽しいなんて不謹慎でしょうか。
そもそも、死に瀕するほどに苦しんでいる人が次から次へと登場するストーリーです。
孤独、育児ノイローゼ、いじめ、うつ病、お金の問題・・・なんて悩みに満ちた世の中でしょう。
彼らには現実を変えることは出来ません。
出来るのは、人の心の奥底に語りかけることだけ。
つまりは、気持ちの持ちようだけで、自殺へのシグナルが黄色になったり、赤になったり。
さまざまな人の心を見るうちに、彼ら4人が自殺しなければならなかったのとそっくりな状況にも出会います。
そんな人々の状況、心を見るうちに、実は自分も死ぬことなどなかったのだ、なんて、馬鹿なことをしたのだろう・・・と、後悔に駆られる彼ら。
涙あり、笑いあり、文庫としては結構ボリュームがありますが、一気に読めてしまいます。テーマは深刻ですが、エンタテイメント。
さて、彼らは無事100人を救い、天国へ行くことができるのでしょうか・・・?!
ちょっとうれしい、おまけのラストもあります。
満足度 ★★★★
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