田村を待つ夜、それぞれの人生
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深夜のバー。小学校のクラス会三次会。
男女五人が、大雪で列車が遅れてクラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ。
各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たちのこと。
それにつけても田村はまだか。
来いよ、田村。
そしてラストには怒涛の感動が待ち受ける。
’09年、第30回吉川英治文学新人賞受賞作。
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朝倉かすみさんらしく、舞台は札幌、すすきのの深夜のバーです。
小学校のクラス会三次会。
男女5人が、遅れてくるという「田村」を待っているのです。
少し話をしては、思い出したように誰かが「田村はまだか」という。
そんな繰り返しの中、刻々と夜は更けていきます。
40歳になる男3人、女2人。
そして似たような年齢のバーのマスター。
ほとんどバーのマスターが聞き役になり、小学校6年当時の「田村」の話になります。
勉強もスポーツも抜群ながら、いつもひっそりと一人でいて、
あまりクラスになじもうとしていなかった彼。
(実は彼の家庭が問題ではあった。)
しかしある出来事で、クラスの皆が湧き上がった。
その出来事のあまりの鮮やかさに、読んでいても興奮してしまいました。
そしてまたその後の彼の人生についても、
なんともいぶし銀のように渋く光る話が続きます。
なるほど、そんなだから、皆が絶対に彼に会いたいと思い、
来るのを心待ちにしているわけなのです。
こんな風に「田村」待ちのなか、
ストーリーはここのマスターも含めた6人それぞれの話に移っていきます。
40ともなれば一応仕事は順調ではあるけれど、
離婚があったり、今さらながらの密かな心のときめきがあったり・・・、
それぞれに屈託を抱えているのです。
人生、いろいろ・・・。
さて、それにしても3時を過ぎてもまだ田村は来ない。
それもそのはず、その頃田村は・・・。
なかなかショッキングな展開。
それにしてもすごく構成が練られていて、よくできた本だなあ・・・と思う次第。
私は、高校生男子を愛おしく思う千夏さんが好きでした。
図書館蔵書にて(単行本)
「田村はまだか」朝倉かすみ 光文社
満足度★★★★★
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