映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

起終点駅 ターミナル

2016年06月21日 | 映画(か行)
最果ての釧路はそれだけで絵になる



* * * * * * * * * *

北海道在住の桜木紫乃さん原作の作品は、やはり気になります。
本作は映画を見たかったので、本の方は未読でした。



学生時代に愛した人(尾野真千子)と再開したものの、今は妻子ある身。
不倫の果てに、相手を自殺に追いやってしまった鷲田完治(佐藤浩市)。
以後25年間、妻子とは別れ釧路で国選弁護士としてひっそりと暮らしてきました。
己を罰するかのように・・・。
そんなある時、椎名敦子(本田翼)という若い女性の弁護を担当したことをきっかけに、
彼女が自宅を訪ねてくるようになります。
完治の止まっていた時間が少しずつ流れ始める・・・。



彼は元裁判官で、旭川の裁判所に単身赴任。
2年ほどで東京へ戻れるはずで、法曹界の出世街道まっしぐらだったのです。
けれど結局自分が愛する人を殺してしまったという思いを捨て去ることができず、
自分の幸せを放棄してしまったのですね。
その行き先が地の果て釧路・・・。
あ、釧路にお住まいの方、ごめんなさい。
同じ北海道とはいえ、札幌に住んでいる私から見ても、
釧路はいかにも地の果て感たっぷり。
そこで通常の弁護士としてではなく、国選弁護の仕事しかしないと心に決め、
慎ましい借家でわびしい一人住まい。
慙愧に堪えない彼の気持ちも痛いくらいにわかりますが、
潔いそこまでの決意に、胸を突かれます。
完治は、殆ど葉室麟さんの描く武士のようでもあります。
が、あまりにも頑なであるのも確かで、
その心に張り巡らせた壁をこじ開けるのが敦子の役割。
何よりもその若さが初老の男の心に風を吹き込みます。



完治が料理をするシーンが多くありまして、
ザンギやイクラ、北海道ならではなんですが、実際美味しそう!! 
ザンギって何?と道外の方は思うでしょうけれど、
つまりは鶏の唐揚げです。
けれど作中で、敦子の
「鶏の唐揚げなんて言ったら、なんだか味がしみてなさそう・・・」
というセリフがあります。
確かに、その通り。
ザンギはやっぱりザンギでしょ!
これにビールがあればもう言うことなし!!
(完治は禁酒もしていたようです。どこまでもストイックなお方・・・)



地の果ての「終点」は、けれども「始発」駅でもある。
だからこそ舞台が「釧路」であることに意義がある。
幣舞橋を、買い物袋をぶら下げてとぼとぼ歩く佐藤浩市さん。
いいわ~。

「起終点駅 ターミナル」
2015年/日本/11分
監督:篠原哲雄
原作:桜木紫乃
出演:佐藤浩市、本田翼、中村獅童、泉谷しげる、尾野真千子

釧路度(?)★★★★★
佐藤浩市さんのうらぶれ度★★★★☆
満足度★★★★☆


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