映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

モリのいる場所

2018年06月01日 | 映画(ま行)

完結しているモリの世界

* * * * * * * * * *


30年ほとんど家の外に出ることなく、庭の生命を見つめ描き続けたという伝説の画家、
熊谷守一(=モリ)のとある一日を描きます。

昭和49年、モリ93歳のある日・・・。
モリ(山崎努)自身はいつものごとく庭の虫や植物を見守っています。
この家を取り仕切るのは妻・秀子(樹木希林)。
この夫婦、なんとも穏やかなんですねえ・・・。

お互いに面と向かって優しい言葉を掛け合ったりはしません。
けれどもその行動の端々に互いを思いやり敬愛していることがにじみ出ている。
とくにこの奥様、夫の風変わりとも言えるライフスタイルをまるごと受け入れて、
その中にちんまりと居座りながら支えているという・・・
うーむ、この雰囲気、確かに樹木希林さんでなければ出せないのではと思いました。
常の女優さんなら、多分優しくなりすぎるのでは?



そしてまたこの家、意外と人の出入りも多いのです。
守一の写真を撮ることに情熱を感じているカメラマン、
隣近所の人たち、また時には何やら得体の知れない男・・・。
それぞれの人々との交流を描きつつ、この夫婦の人となりが浮かび上がってきます。



家の中と草木が生い茂る庭。
この中でモリの世界は完結しているのです。
必要があれば向こうからくる。
これ以上の何を欲する事があるだろうか・・・。
ということで、あっさりと文化勲章を断ってしまうこの夫婦には感服。



それでも世の中は変わっていく。
隣接する場所にマンションが立ち、庭にほとんど日が当たらなくなってしまうことになる・・・、
ということで、モリはある一つの決断を下す必要に迫られます。
変わらない毎日のようでいて、やはり人の世は絶えず変化していくものだ
という諦念もそこにはある。
というか、むしろそういうことを切り取った作品というべきなのかもしれませんね。



劇場は意外と賑わっていました。中高年の方がほとんどでしたけれど。

<ディノスシネマズにて>
「モリのいる場所」
2018年/日本/99分
監督・脚本:沖田修一
出演:山崎努、樹木希林、加瀬亮、吉村界人、光石研

夫婦愛度★★★★☆
満足度★★★★☆



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