ショッピングモールの5・7・5
* * * * * * * * * * * *
ポップな色合いのアニメです。
人前でなかなか思ったことを口にできない、コミュ障気味の少年チェリー。
いつもヘッドホンをつけて、外部との接触を遮断。
それは人から話しかけられないようにする盾でもあります。
そんなチェリーですが、俳句が好きで、いつも言葉を探し、紡いでいます。
ある日、チェリーはふとしたはずみで少女・スマイルと出会う。
彼女は前歯が少し出ていて、しかも今は歯の矯正具をつけているので、
人から隠すために常にマスクをつけているのです。
いわば、スマイルにとっての盾がマスク。
さて、チェリーのバイト先、デイサービスセンターに通う老人フジヤマが、
思い出のレコードを探し回っていることを知り、
チェリーとスマイルも手伝うことに。
次第に距離を縮めていく2人。
しかし、あることで気持ちはすれ違い・・・。
自分を解き放てない若い2人のことがテーマ。
そこで俳句がみずみずしい感情の発露に手を貸しています。
ちなみに、チェリーというのは彼の名前、「さくら」から来るニックネーム。
まあ、チェリーボーイの意味も含んでいそうですが。
そして本作はもうひとつ、「時」がテーマでもあります。
チェリーがバイトしているデイサービスセンターあり、また、この2人が出会った場所でもあるのは、
この地域にある大きなショッピングモール。
ここには以前レコードのプレス工場があったということで、
フジヤマ老人はそこで働いていたのです。
そして、いまは亡きかつての若かりし妻が歌っているレコードが、
ジャケットのみを残して中身が消えており、
意気消沈し半ばボケてもいる老人が、そのレコードを探し回っているというわけ。
若く未来への希望に燃えた青年が、すっかり老いてしまうまでの時間。
それはレコードプレス工場が消えて、
立派なショッピングモールができて、人々が集うようになった時間でもある。
ショッピングモールの中に、かつてのレコードプレス工場の記念碑的なものが
ちゃんと設置してあるのがまたなんともステキなのです。
いかにも現代的、ポップな色合いの中に、いにしえを配置。
年配の人だけでなく若者も俳句を詠む。
いい感じにミックスされ、世代の分断を軽く飛び越えていくステキな作品なのでした。
<Eテレ視聴にて>
「サイダーのように言葉が湧き上がる」
2020年/日本/87分
監督・脚本・演出:イシグロキョウヘイ
原作:フライングドッグ
出演(声):市川染五郎、杉咲花、潘めぐみ、花江夏樹、山寺宏一
時の表現度★★★★★
満足度★★★★☆
たまたま新聞のテレビ欄で目について、録画しました。
普段見逃しているものも多いだろうなあ・・・と思います。
これは見逃しました。
観たいです。
( ..)φ