心から自分のしたいことをする歓びこそが人生の至福
* * * * * * * * * *
僅かな月日でも好きなように生きられたら―。
北町奉行所同心の夫を亡くした商家出のうめは、
気ままな独り暮らしを楽しもうとしていた矢先、
甥っ子の隠し子騒動に巻き込まれ、ひと肌脱ぐことを決意するのだが…。
笑って泣いて
―"遺作"に込められた家族愛、そして夫婦愛の物語。
最後の長編時代小説。
* * * * * * * * * *
宇江佐真理さんの遺作となった本作、
実は未完のままなのですが、
おおよそ起承転・・・くらいのところまではできているようです。
妻として、母としてこれまではひたすら尽くしてきた、うめ。
夫が亡くなったこの機会に、ひとり暮らしをして
気ままに暮らしたいと彼女は思ったのです。
本作、江戸が舞台でありながら、
宇江佐さんはかなりその時代性を無視して、
今様の女性の生き方を探っているように感じられます。
病を押して執筆された本作は、特に著者の思いが込められているようです。
巻末の解説で諸田玲子さんも述べていますが、
著者は本作のうめと自身を重ねているのだろう、と。
作中うめがせっせと梅干しを作るところがあるのですが、
このことは宇江佐さんにとっての「小説を書くこと」なのではないかといいます。
「心から自分のしたいことをする歓びこそが人生の至福なのだという普遍の真実」。
それが梅干し作りであり、小説を書くこと・・・、
まあ、人それぞれ。
どうせ死ぬ時は誰でも一人。
だから生きたいように生きればいい。
潔い江戸の女将さん気質だなあ・・・。
いえ、もちろんだからといって、人のことも顧みない自分勝手というわけではありませんよ。
このうめ婆も、せっかくひとり暮らしをはじめたのに、
様々な面倒事が身の回りで起こり、そのお世話やら何やらで忙しい。
結局人は人と関わり合いながら生きるしかないし、
その中にこそ悲しみもあるけれど歓びもある。
偉そうなことを言っている自分も、みんなに支えられてこそある
・・・と、実感していくわけです。
結末は書かれていないけれども、
きっとうめは一人暮らしを貫くのではないかな・・・?
と思うのですが。
ところで、うめが嫌々ながら結婚した相手は、短気で怒鳴ってばかり。
愛しいと思ったこともなく、死んだときにも涙も出なかった・・・
こんなうめが、夫への思いをどう割り切るのか。
作中ではそんな夫でも、いくらかは自分を大切に思ってくれているところもあったようだ
というふうにうめは納得していくようなのですが、
そこのところはなんだか私には割り切れません。
夫の妹が急に態度を変えるところも腑に落ちない。
・・・やっぱりいつもの著者の「キレ」がさすがに衰えていたのかもしれず・・・
そんなことを言うのは、こちらの身勝手か・・・。
私にはやはり伊三次のシリーズが好きでした。
図書館蔵書にて(単行本)
「うめ婆行状記」宇江佐真理 朝日新聞社
満足度★★★☆☆
うめ婆行状記 (朝日文庫) | |
宇江佐 真理 | |
朝日新聞出版 |
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僅かな月日でも好きなように生きられたら―。
北町奉行所同心の夫を亡くした商家出のうめは、
気ままな独り暮らしを楽しもうとしていた矢先、
甥っ子の隠し子騒動に巻き込まれ、ひと肌脱ぐことを決意するのだが…。
笑って泣いて
―"遺作"に込められた家族愛、そして夫婦愛の物語。
最後の長編時代小説。
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宇江佐真理さんの遺作となった本作、
実は未完のままなのですが、
おおよそ起承転・・・くらいのところまではできているようです。
妻として、母としてこれまではひたすら尽くしてきた、うめ。
夫が亡くなったこの機会に、ひとり暮らしをして
気ままに暮らしたいと彼女は思ったのです。
本作、江戸が舞台でありながら、
宇江佐さんはかなりその時代性を無視して、
今様の女性の生き方を探っているように感じられます。
病を押して執筆された本作は、特に著者の思いが込められているようです。
巻末の解説で諸田玲子さんも述べていますが、
著者は本作のうめと自身を重ねているのだろう、と。
作中うめがせっせと梅干しを作るところがあるのですが、
このことは宇江佐さんにとっての「小説を書くこと」なのではないかといいます。
「心から自分のしたいことをする歓びこそが人生の至福なのだという普遍の真実」。
それが梅干し作りであり、小説を書くこと・・・、
まあ、人それぞれ。
どうせ死ぬ時は誰でも一人。
だから生きたいように生きればいい。
潔い江戸の女将さん気質だなあ・・・。
いえ、もちろんだからといって、人のことも顧みない自分勝手というわけではありませんよ。
このうめ婆も、せっかくひとり暮らしをはじめたのに、
様々な面倒事が身の回りで起こり、そのお世話やら何やらで忙しい。
結局人は人と関わり合いながら生きるしかないし、
その中にこそ悲しみもあるけれど歓びもある。
偉そうなことを言っている自分も、みんなに支えられてこそある
・・・と、実感していくわけです。
結末は書かれていないけれども、
きっとうめは一人暮らしを貫くのではないかな・・・?
と思うのですが。
ところで、うめが嫌々ながら結婚した相手は、短気で怒鳴ってばかり。
愛しいと思ったこともなく、死んだときにも涙も出なかった・・・
こんなうめが、夫への思いをどう割り切るのか。
作中ではそんな夫でも、いくらかは自分を大切に思ってくれているところもあったようだ
というふうにうめは納得していくようなのですが、
そこのところはなんだか私には割り切れません。
夫の妹が急に態度を変えるところも腑に落ちない。
・・・やっぱりいつもの著者の「キレ」がさすがに衰えていたのかもしれず・・・
そんなことを言うのは、こちらの身勝手か・・・。
私にはやはり伊三次のシリーズが好きでした。
図書館蔵書にて(単行本)
「うめ婆行状記」宇江佐真理 朝日新聞社
満足度★★★☆☆
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