映画と本の『たんぽぽ館』

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最強のふたり

2012年09月04日 | 映画(さ行)
彼だけが私に同情しなかった



                     * * * * * * * * * 

首から下が麻痺して全く動かないという身体障害者のストーリー
・・・と聞くとちょっと構えてしまうものですが、
このストーリー、実話を元にしていながら実にコミカル。
身障者との垣根はまさに自分が作り出しているのだなあ・・・とわかります。


富豪の男フィリップはパラグライダーの事故で首から下が不随。
これまで何人もの介護役がついたのですが、すぐに辞めていってしまいます。
そんな所へ介護役に応募してきたのが黒人青年ドリス。
彼はスラム育ちの前科持ち。
“就職活動をしたけれどもダメだった”という証拠の書類だけがあれば失業保険がもらえるので、
経験も資格もなく、とりあえず応募してきたのです。
ところが面接の時に、フィリップが彼を気に入ってしまった。
「彼だけが私に同情しなかった」
とフィリップはいいます。
ドリスは常識や偏見にとらわれず、思ったことをそのまま口に出す。
多くの人のように、フィリップに腫れ物にさわるような扱いをしない。
介護の知識も技術も何も持っていないけれど、そんなことは後からついてくるのです。



片や、肉体的には圧倒的ハンデを背負っているけれど、財力においては最強。
もう片や、住むところもない最悪の財産状況ながら、強力な肉体を持つ。
互いの欠損を埋め合うかのようなコンビネーション。
社会的立場も音楽の趣味もまるで合わないし、
こんな事にならなければ、多分会話を交わすこともなかったであろう二人ですが、
こうして見ると相性的にはベストマッチということが必然に思えてくるのです。
でも実際、こういう組み合わせで知りあう事自体がまれなのかも知れません。
そして、こんなふうな友情を育むのは
ある意味男女の恋愛よりももっと難しいのかも。



二人が補助付きですがパラグライダーで飛ぶシーンがなんともいえずにいいです。
色々しがらみの多い社会からも、不自由な肉体からも自由に空をとぶ。
いつも威勢のよいドリスがこの時ばかりはビビリまくっていましたが、
次第にその爽快感に歓声を上げていく。
素敵なシーンでしたねえ。
このように何ものからも自由に生きられたら・・・。



オマール・シーのとびきり豊かな表情に魅了されました。
こんな人と一緒にオペラを聞いたり美術展に行ったら、すごく面白そうだなあ・・・・!!

「最強のふたり」
2011年/フランス/113分
監督・脚本:エリック・トレダノ、オリビエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー、オドレイ・フルーロ、アンヌ・ル・マニ


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2 コメント

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純粋 (こに)
2012-09-07 19:41:52
フィリップの誕生会でドリスが述べたクラシック音楽の感想がまだ心が清らかな子供が語っているみたいで良かったです。

日本では、どれくらいヒットするでしょうか。(^_^)
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ドリスが学んだこと (たんぽぽ)
2012-09-07 20:01:22
>こにさま
始めはただ粗暴なドリスでしたが、次第に物腰が柔らかくなり、自然な人への思いやりができてきますよね。
お母さんへ向ける思い。
フィリップが、文通相手に自分の全身写真を送らなかったことに気づいても非難をしなかったり。
フィリップの介助をするだけでなく、彼自身もいろいろなものを身に着けていく、というところがいいなあと思います。
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