生きることの意味を問う
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黒澤明監督作品「生きる」を、カズオ・イシグロの脚本により、
イギリスでリメイクしたものです。
本家「生きる」は有名な名作ですが、例によって、私は見ていません・・・。
この年で映画好きなどと言えば往年の名作、
特に黒沢作品ならすべて何度も見ているはず、などと思われがちですが、
全く見ていませんので、あしからず。
(威張ることじゃない)
舞台は1953年のロンドン、ということで、原作とはほぼ同時代。
冒頭シーンの画質や映し出される街の光景が、
まさしくそういう時代を感じさせるのが、すごいです。
これまで仕事一筋に生きて来た役所勤めのウィリアムズ(ビル・ナイ)。
ところがガンに冒されていることが分かり、余命宣告を受けてしまいます。
彼は、ヤケになって仕事を放棄し、
酒を飲んでバカ騒ぎをしたりしますが、満たされません。
そんな時にかつての部下、マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)と再会します。
若くて快活、エネルギーに満ちた彼女。
茶目っ気のあるマーガレットは、実は密かにウィリアムズに
「ゾンビ」というあだ名をつけていたと白状するのです。
つまりは、まるで「生きる屍」のような・・・?
それで、ウィリアムズは思うのです。
これまで自分は本当に生きていたのだろうか?
せめて残り少ない命を、本当に生きてみようと思うわけですね。
そしてサボり続けていた職場に戻り、
これまでたらい回しの末放置されていた案件を実現させようと、動き始める。
その熱意は周囲の人をも巻き込むほど。
生きることの意味に真っ正面から立ち向かう感動の物語。
原作を見ていないので、どこが同じでどこが違うのか、
比較できないのはちょっと残念ではあります。
順不同ではありますが、やはり原作をみるべきか。
でも、お役所仕事の有様はどこの国でも同じだなあ・・・と思ってしまいました。
それと、クレーンゲームがこんな時代からあったとは・・・!
<シネマフロンティアにて>
「生きる LIVING」
2022年/イギリス/103分
監督:オリバー・ハーマナス
出演:ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ、トム・バーク
生きることの意味を探る度★★★★☆
お役所仕事度★★★★★
時代表現度★★★★★
満足度★★★★★
私は黒澤作品も観ましたが、遥か昔のことで詳細は憶えていないのです。
でも大筋だけでも、かなり忠実に再現していたと思います。
ただ、本作でウイリアムズは何故息子に言わなかったのか、ちょっと引っ掛かりました。
息子も悲しむって分かっていたでしょうにねえ?