映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

どん底作家の人生に幸あれ!

2022年02月12日 | 映画(た行)

貧乏はどん底ではあるけれど

* * * * * * * * * * * *

ディケンズの自伝的小説「デイヴィッド・コパフィールド」の映画化です。

優しい母と家政婦に見守られて幸せに暮らす少年・デイヴィッド。
周囲の変わった人たちや事柄を書きとめ、空想を巡らすのが大好きでした。
やがて、母が再婚。
ところが義父はとんでもない冷血漢で、デイヴィッドは工場に売り払われてしまいます。
そんなどん底の中で、たくましく成長したデイヴィッド(デブ・パテル)。
しかし、母の死をきっかけに彼は工場を脱走し、唯一の肉親である叔母を頼ります。

幸い叔母は裕福で、デイヴィッドは援助を受けて上流階級の名門校に通い始め、
その後法律事務所で働き始めますが・・・。

本作で最も特徴的なのは、多様性の重視。
人種お構いなしでキャスティングがなされていること。
なにしろ、英国人の主人公がまずデブ・パテルだし、
他の登場人物も、アフリカ系、東洋系、何でもあり。
英国貴婦人が黒人だったりするのに始めは戸惑いましたが、
そういうシステムだと分かれば、かえって人の区別がつきやすく、
これはこれでOKだと思えてきます。

それにしても、デイヴィッドの極端な人生の浮き沈み、
すべてお金があるかなきかということも切ないなあ・・・。
まあ、今でもあまり変わりはないと思うのですが。
借金が返せなければ監獄行き、というのもあんまりですね。
相続のこととか、児童福祉のこととか、
制度的には今の方がやはり少しマシかもしれません・・・。

などと、考え始めると深刻になっていきますが、
作品自体はコメディで、楽しいですよ。

ひどい人もいるけれど、愛すべき人々も多く登場します。
裕福な叔母さんが財産をなくしてしまい、
荷物一つでデイヴィッドの所に転がり込んできたりします。
しかも狭くてぼろいその部屋に、
さらにホームレスとなってしまっていた知人の大家族も転がり込んで来る。
実際すし詰め状態だけれど、それでも鷹揚に構えている叔母さん、大人物だなあ・・・!

貧しくても心が豊かな人がいっぱいというのは良いことです。
そしてこんな波乱に満ちた人生から、物語が生まれるというのは納得ですね。

<WOWOW視聴にて>

「どん底作家の人生に幸あれ!」

2019年/イギリス・アメリカ/120分

監督:アーマンド・イアヌッチ

原作:チャールズ・ディケンズ

出演:デブ・パテル、アナイリン・バーナード、ピーター・キャパルディ、
   ティルダ・スウィントン、ベン・ウィショー、ヒュー・ローリー

コメディ度★★★★☆

人生の浮き沈み度★★★★★

満足度★★★★☆

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿