貧乏はどん底ではあるけれど
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ディケンズの自伝的小説「デイヴィッド・コパフィールド」の映画化です。
優しい母と家政婦に見守られて幸せに暮らす少年・デイヴィッド。
周囲の変わった人たちや事柄を書きとめ、空想を巡らすのが大好きでした。
やがて、母が再婚。
ところが義父はとんでもない冷血漢で、デイヴィッドは工場に売り払われてしまいます。
そんなどん底の中で、たくましく成長したデイヴィッド(デブ・パテル)。
しかし、母の死をきっかけに彼は工場を脱走し、唯一の肉親である叔母を頼ります。
幸い叔母は裕福で、デイヴィッドは援助を受けて上流階級の名門校に通い始め、
その後法律事務所で働き始めますが・・・。
本作で最も特徴的なのは、多様性の重視。
人種お構いなしでキャスティングがなされていること。
なにしろ、英国人の主人公がまずデブ・パテルだし、
他の登場人物も、アフリカ系、東洋系、何でもあり。
英国貴婦人が黒人だったりするのに始めは戸惑いましたが、
そういうシステムだと分かれば、かえって人の区別がつきやすく、
これはこれでOKだと思えてきます。
それにしても、デイヴィッドの極端な人生の浮き沈み、
すべてお金があるかなきかということも切ないなあ・・・。
まあ、今でもあまり変わりはないと思うのですが。
借金が返せなければ監獄行き、というのもあんまりですね。
相続のこととか、児童福祉のこととか、
制度的には今の方がやはり少しマシかもしれません・・・。
などと、考え始めると深刻になっていきますが、
作品自体はコメディで、楽しいですよ。
ひどい人もいるけれど、愛すべき人々も多く登場します。
裕福な叔母さんが財産をなくしてしまい、
荷物一つでデイヴィッドの所に転がり込んできたりします。
しかも狭くてぼろいその部屋に、
さらにホームレスとなってしまっていた知人の大家族も転がり込んで来る。
実際すし詰め状態だけれど、それでも鷹揚に構えている叔母さん、大人物だなあ・・・!
貧しくても心が豊かな人がいっぱいというのは良いことです。
そしてこんな波乱に満ちた人生から、物語が生まれるというのは納得ですね。
<WOWOW視聴にて>
「どん底作家の人生に幸あれ!」
2019年/イギリス・アメリカ/120分
監督:アーマンド・イアヌッチ
原作:チャールズ・ディケンズ
出演:デブ・パテル、アナイリン・バーナード、ピーター・キャパルディ、
ティルダ・スウィントン、ベン・ウィショー、ヒュー・ローリー
コメディ度★★★★☆
人生の浮き沈み度★★★★★
満足度★★★★☆
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