映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ムーンライト・シャドウ

2022年02月10日 | 映画(ま行)

月影現象で

* * * * * * * * * * * *

さつき(小松菜奈)と等(宮沢氷魚)は、運命に導かれるように出会い、恋をします。
等の3歳年下の柊(佐藤緋美)と柊の恋人ゆみ子(中原ナナ)を合わせた4人は、
意気投合し、多くの時間を共に過ごします。

そんな中で、
「満月の夜の終わりに、死者ともう一度会えるかも知れない」
という“月影現象”の話が出ます。
もしそんなことができたら、誰に会いたいか、などと言いながら・・・。

ある時、等とゆみ子が事故死。
突然の別れに打ちひしがれるさつき、そして柊。
そんな時2人は、麗(臼田あさ美)という不思議な雰囲気をまとう女性と出会い、
徐々に日常を取り戻していき・・・。

吉本ばななさん原作。
生と死についてのテーマが根底に流れる、静謐な作品です。

本作のような事故死の場合には、最後の挨拶を交わすこともなかったでしょう。
だから余計に喪失感が増す。
もし死者ともう一度だけ会うことができたとしても、
それはほんの一時で、ムダなことなのでは、と言う人もいるでしょう。
でも、そうではないと思う。
最後に思いをこめて会う、ということ。
それが大事なのだと思います。

作中で「水」について多く触れられています。
月影現象のためには、川のそばでなければならないというのも、その一つ。
水の流れは目に見えない地下深くにも張り巡らされていて、絶えることがない。
それはまるで、私たちの血の流れのようでもありますね。
水の流れは命の流れ。
そしてそれは時の流れでもある。

 

そしてまた、生きることは、食べることでもあります。
さつきは等が亡くなった後、ろくに食事ができなかった。
全く食欲がわかないのです。
けれど、さつきは日常を取り戻すことで、食欲も出てきます。

死者は流れ去ってしまう。
けれど生きている者は、食べて、さらなる流れに乗って進んでいかなければなりません。
月影現象はそのための儀式なのかも知れませんね。

<WOWOW視聴にて>

「ムーンライト・シャドウ」

2021年/日本/92分

監督:エドモンド・ヨウ

原作:吉本ばなな

出演:小松菜奈、宮沢氷魚、佐藤緋美、中原ナナ、吉倉あおい、臼田あさ美

 

静謐度★★★★☆

満足度★★★☆☆



最新の画像もっと見る

コメントを投稿