映画と本の『たんぽぽ館』

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ファミリー・ツリー

2012年05月23日 | 映画(は行)
お父さんの悪戦苦闘



                 * * * * * * * * * 

誰もが憧れる地上の楽園、ハワイ。
けれどそこに暮らす人々にとっては、
生活の中で当然いろいろな悩みや苦しみがあるわけで・・・。
この物語の主人公、マット(ジョージ・クルーニー)もそんな一人です。



祖先の土地を受け継いで、ハワイで妻と二人の娘と暮らすマット。
しかし、妻がボートの事故で昏睡状態になってしまいます。
そしてその妻には浮気相手がいて、離婚まで考えていたことをはじめて知ります。
これまで仕事中心で、全く妻のことや娘たちのことを見ていなかったことに愕然とするマット。
折しも、親戚一同で共有するカウアイ島の広大な土地を
開発業者に売却するかどうかの決断を迫られている時でもあります。
さあ、この家族はどうなってしまうのか・・・?



ストーリーに特に起伏があるわけではありません。
ひたすら、娘たちとうまくコミュニケーションが取れずにオロオロし、
また妻の不倫を知ってオロオロ・・・、
不器用なお父さんの悪戦苦闘がちょっぴりコミカルに描かれます。
けれども、なんともバラバラだった家族が次第にまとまっていく様に、
なんだか泣かされてしまうのです。
そうそう、人生も人の心も、自分が望むようになんかなりゃしない。
けれども、人と分かり合うっていうのは、幸せなことですよね。
ささやかだけれど、そんな幸せがあれば、私たちは生きていける。
家族というのは、そういう最も近い存在なのです。


祖先から受け継いだこの美しい土地。
この土地に育まれた自分たち、そして今いる家族。
家族の絆を取り戻したマットは、
同じくこの土地への愛着も取り戻すのでしょう。
舞台がどこでも成り立つ話のようでいて、
やはりこの風土でなくてはならないですね。
悲しみの涙も、柔らかいハワイの海風にまもなく癒されるに違いありません。
リゾート地との印象ばかりが強いハワイですが、
こんなふうに何代にもわたってこの地に根を下ろし生活する人々、という視点がとても新鮮でした。



それから、なぜか彼ら一家にいつも同行することになる、長女の友人シドの存在がナイスでした。
始めはなんだか軽薄な少年に思えるのですが、
意外と深くていい奴だったりします。
到底分かり合えなさそうな娘二人との道行が、あまりにも息詰まりそうだから、
ジェネレーションギャップはありながら、同じ“男”を味方として配したのかも知れません。



今作、原題は“The Descendants”、子孫とか末裔という意味ですね。そ
うか、ファミリー・ツリーというのも“家系”の意味なので、ほぼ同意味。
なるほど、私達にはファミリー・ツリーの方がしっくりきます。
うまいネーミングです。

「ファミリー・ツリー」
2011年/アメリカ/115分
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ジョージ・クルーニー、シャイリーン・ウッドリー、アマラ・ミラー、ニック・クラウス、ボー・ブリッジス


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