映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

あゝ、荒野  前篇

2020年03月10日 | 映画(あ行)

孤独な魂が、ボクシングに惹かれていく

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寺山修司原作の本作、よく見たら1年以上前に録画したモノでした。
前後篇ある上にそれぞれも長いので、見るのに二の足を踏んでいたのです。
ところが、見ると面白くてぐいぐい引き込まれ、全然長くは感じませんでした。
もっと早く見れば良かった・・・。
それでてっきり舞台は昭和かと思っていたら、なんと2021年。
ほんの少し未来です。



新宿。
母に捨てられ孤児院育ち、少年院帰りの新次(菅田将暉)と、
暴力を振るう父親の元から飛び出した吃音のある健二(ヤン・イクチュン)が
「片目」こと堀(ユースケ・サンタマリア)のボクシングジムに誘われます。
新次は以前仲間を裏切った裕二に復讐を果たすため、
健二は内気な自分を変えるため、
それぞれトレーニングに励みます。



前篇はこの二人がプロボクサーとなり、徐々に力をつけていくまでを描きます。
うらぶれたボクシングジムのトレーナーが片目。
少年院帰りの主人公。
なんだか「あしたのジョー」を思い出しますねえ・・・。



新次と健二はこのジムに住み込む兄弟弟子。
けんかっ早い新次はいかにもボクシング向きですが、
健二は気が弱く優しげで、ボクシングに向くようには思えない。
しかし実は隠れた素質を持っているのです。
いよいよプロ資格を取った二人のリング名は
「新宿新次」と「バリカン健二」(健二は床屋に勤めているので)。
新次は介護施設でバイトをしつつトレーニングに励みます。
彼の性格が全く介護に向きそうでないのですが、
なんとか耐えてがんばっているのが微笑ましい! 



そのほか背景として大学生の反法案デモや「自殺研究会」なるモノが出てきたり、
新次の彼女が、震災の地から逃げ出してきたことなどが語られ、
幾分かの現代性を醸し出しています。
このあたりが原作では多分少し形がちがうのかな、と想像します。
生きることの意味、闘うことの意味は、まだぼんやりとした問いかけにしかすぎません。
後篇を待て!!

 

 


<WOWOW視聴にて>
「あゝ、荒野  前篇」
2017年/日本/157分
監督:岸善幸
原作:寺山修司
出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、木下あかり、モロ師岡、山田裕貴、ユースケ・サンタマリア、木村多江、でんでん

青春度★★★★☆
家族崩壊度★★★★★
満足度★★★★☆

 



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