映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

キッチン

2012年05月28日 | 映画(か行)
淡白な同居関係はママゴトなのか?

              * * * * * * * * * *

吉本ばなな原作のこの作品。
本の方も読んだことがなく、初挑戦です。


同居していた祖母を亡くし、天涯孤独となったみかげ。
生前に祖母と知り合いだった雄一の誘いで、彼のマンションに住むことになりました。
「僕のうちに来ないかい?」
いきなりのそのセリフに、私はてっきりプロポーズかと思ったのですが、
そうではなく本当に単に同居。
そこには雄一の“母”も同居しています。
実はその“母”は、ゲイの父親だったのですが・・・、
みかげは、さして驚きもせず、淡々と受け入れます。
こうして不思議な3人の同居生活が始まるのです。


若い男女、ゲイの父親。
何やら猥雑な予感のするシチュエーションでありながら、
スタイリッシュな高級マンションで始まる3人の生活には性的な生臭さもなく、
何やら静かな透明感が漂います。
みかげは料理の勉強をしているため、もっぱら炊事担当となり、
食卓には美味しそうな料理が並びます。
清潔感あふれるなんでも揃った豪華なキッチン。
これが実に穏やかで充足した生活となるのです。
互いに気遣いを忘れず、食卓を囲む。
実の夫婦や血縁の家族のような馴れ合いもない。


ある日、雄一の彼女がみかげの元を訪れます。
「そんな関係ではない」
というミカゲの言葉を信じられないようでしたが、やがて
「あんたは、男と女の一番重いところから逃げてる」
とみかげを非難します。
この一見充足しているように思える生活は、
豪華なキッチンをめぐるおままごとのようなもの・・・? 
そう思ったのかどうか、みかげは、この家を出ることにしますが・・・。


お互い気があっているのにもかかわらず淡白なこの二人の関係は、むしろ今日的のような気がします。
二十数年前の公開時なら、ちょっと奇異に思えたのかも知れません。
今なら特に疑問もなく、この共同生活は続くのかも。
今やもう死物と化した“ワープロ”が最先端の時代。
私にはついほんの少し前に思われますが、
時代は想像を超えて変化していくものですね。


主演の二人、川原亜矢子さん、松田ケイジさんは、私には馴染みのない方なんですが、
自然体でいい感じでした。
“お母さん”役は橋爪功さんですよ。
橋爪功の女装、これは一見の価値ありです。

キッチン [DVD]
吉本ばなな
バンダイビジュアル


「キッチン」
1989年/日本/106分
監督:森田芳光
原作:吉本ばなな
出演:川原亜矢子、松田ケイジ、橋爪功、中島陽典、浜美枝


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