幻想的かつ美しく残酷
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ミモザの父・閑に一通の封筒が届いた。
白い線で描かれた薔薇の絵のモノクロ写真が一枚入っていて、
裏には「四月二十日。零時。王国にて。」とあった。
病床の父は写真に激しく動揺し、捨てろと彼に命じる。
その姿を見たミモザは春の夜、余命短い父のために指定された明石ビルに向かう。
廃墟と化したビルの最上階には三人の男たちが待っていた。
男たちは過去を語りはじめる。
白墨の王国だったこのビルの哀しく凄まじい物語を―。
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私には初めての作家さん。
いや、それにしても、まだまだ未読の本が大海のように広がっているものですね。
ちょっと変わった建物に住んでいた人々が織りなす物語。
その建物は、中央の中庭を取り囲んで作られている、5階建ての古めかしいビル。
スペインのパティオをイメージしてあるらしい。
・・・と、この作りは、よくミステリに登場するのであります。
そこに住んでいた一人の女と、その娘、そして4人の男たち。
そこで起きた凄惨な事件・・・。
そして約30年を経て、廃墟となったこのビルに関係者が集まる。
30年前に起こった出来事とは一体何だったのか・・・。
本作、ジャンルわけをするとしたら何になるのでしょう。
ファンタジー?
ミステリ?
幻想的で残酷な物語ながら、最後に真相が語られるのはミステリ的。
私が今までに読んだ中では、篠田真由美さんのムードに近いかも知れません。
この一種独特な雰囲気、好きですねえ・・・。
ちょっと魅せられまして、この著者の本をもう少し読んでみようかな、
という気になりました。
図書館蔵書にて
「廃墟の白墨」遠田潤子 光文社
満足度★★★★☆
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