映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

焼肉ドラゴン

2018年07月10日 | 映画(や行)

高度経済成長の影で

* * * * * * * * * *

鄭義信さんによる舞台劇の映画化で、監督・脚本も鄭義信さん。



高度経済成長と大阪万博に湧く1970年代。
関西のとある地方都市。
在日朝鮮人が住まう雑然とした地域。
しかし子どもたちや主婦の喧騒が賑やかで、活気にあふれているようでもあります。
そんな一角にあるのが小さな焼肉屋ドラゴン。
主の龍吉(キム・サンホ)は、かつて日本兵として無理やり戦争に駆り出され、片腕を失っています。
けれど、妻英順(イ・ジョンウン)と力を合わせ必死に働いて来ました。
長女・静花(真木よう子)、次女・梨花(井上真央)、三女・美花(桜庭ななみ)と
長男・時生の6人家族。
娘たちはそれぞれ年頃で、次女は幼馴染の哲男(大泉洋)と結婚するところ。
しかし哲男は実は静花に心を寄せているようなのですが・・・。
そして、時生は学校でいじめにあっており、目下心を病んで言葉が出なくなっている様子。
そしてまた、龍吉はこの土地を戦後間もなくある人物にお金を出して買ったのですが、
実は国有地なので立ち退くようにと役所に言われています。
どれもなかなか難しい問題ばかり。
彼らはこの難問をどう乗り超えるのか、
もしくは乗り超えられないのか・・・。

先日読んだ「世界の果てのこどもたち」の美子(ミジャ)を思い出しました。
日本の統治下となった朝鮮から日本の本土へ渡ってきて終戦。
どさくさに紛れるうちに故郷へ帰りそびれ、朝鮮戦争で帰る場所も失ってしまった。
他に行き場はなく、この地で生きていく他ない。
しかし、生活は厳しく、その上差別まで受けるという理不尽な状況・・・。
美子も、この家の一家も、似たようなことになってしまいますね。
在日の方の言い尽くせない苦労が忍ばれます。



さて、この一家を見舞った最大の悲劇・・・
これには普段恨み言もはかない龍吉さんがついに爆発します。
どんなに頑張っても、歯を食いしばってもかなわない事がある。
ひたすら頑張ればよいのだと、そうした自分の考えがもしかしたら間違いだったのか
・・・そんな思いもあったことでしょう。
苦い思いがいっぱいに広がるわけですが・・・、それでも人は生きていかねばなりません。
ある意味開き直ったようなたくましさ、生きる力に、
多分悪いことばかりではないよ・・・と、ささやきたくなってしまう私でした。



それにしても、静花と哲男の先行きがものすご~く心配になってしまいますが、
先のことは描かれていません・・・。
北海道人の大泉洋さんは、関西弁に苦労していたようにみうけられましたが・・・?



<シネマフロンティアにて>
「焼肉ドラゴン」
2018年/日本/126分
監督・原作・脚本:鄭義信
出演:真木よう子、井上真央、桜庭ななみ、大泉洋、大谷亮平、キム・サンホ、イ・ジョンウン

理不尽度★★★★☆
満足度★★★★☆



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