孤高なハンナの生き様に心が揺り動かされる
* * * * * * * *
ベルンハルト・シュリンクの原作、「朗読者」は、
ベストセラーとして話題になっていた頃に読みました。
だから、この映画の一番のミソの、ハンナの秘密は知っていました。
でも、そんなことはさしたる問題ではなく、引き込まれて観ました。
それはここに登場するハンナの鮮烈な生き様に圧倒されるから・・・。
見終わった後、ややボーっとしてしまうくらいに上質な作品です。
「泣ける」というのとはちょっと違うのですが、魂が揺り動かされる気がします。
1958年ドイツ。
15歳マイケルが21歳年上のハンナという女性と初めての情事を持ちます。
意志の強そうな大人の女性ハンナは、
マイケルを「坊や」とよび、本の朗読を課します。
初恋に燃え上がるマイケル。
朗読と情事にくれる一夏。
しかしそんなある日、彼女は忽然と姿を消してしまいます。
その後、1966年。
マイケルは大学で法律を学んでいます。
なんと法廷の被告席にいるハンナを見つけるのです。
それは、ナチスに加担したものに対する裁判。
しかし、そのこととは別に、
マイケルはハンナが必死に隠し通してきた彼女の秘密に気づくのです。
美しい青春の愛と挫折。
始まりはそんな風です。
ここの情事は結構濃密でありながら、ちょっと切なくキレイですね。
しかし、ふたたび会うことがなければ、
単に美しい思い出として終わったかもしれません。
でも、幸か不幸か、二人の人生はまた交差してしまう。
そして、それはマイケルのその後の人生にずっと暗い影を落とし続ける。
ユダヤ人収容所の看守として務めたハンナですが、
それは与えられた職務だった。
そうした中での責任をどこまで問うことができるのか・・・。
こうしたホロコーストにまつわる部分も
この映画の大きなテーマではあるのです。
でも、もっと大きなテーマは、
このハンナの、凛とした孤高の生き方にあると思います。
何者にも寄りかからず、誇り高い精神。
マイケルは結局彼女のために「朗読者」であることしかできなかった。
でも、それは実は彼女の欠けたところを補う、
とても大切なピースではあったのですね。
なぜマイケルは彼女の秘密を明かすことをしなかったのか。
いろいろなことが考えられます。
ここをはっきり言わずに、見るものにゆだねたところがいいですね。
彼が届けるテープは、つぐないなのか、慰めなのか。
余韻が残ります。
ベッドで本を読む男女。
ずっと忘れられないシーンになりそうです。
さて、ケイト・ウィンスレットは実に見事に「ハンナ」でした。
彼女が持つ強さと弱さをきちんと表現している。
アカデミー賞最優秀主演女優賞。大いに納得です!
<追記>2009/6/27
この映画は、記事にした後もいろいろ考えてしまったのですが、
時間を置くともう少しきちんと見えてきました。
上記文中に『マイケルは「朗読者」であることしかできなかった。』
とあるのですが、
これは、マイケルがあえてそういう選択をしたのですね。
正義感の強いマイケルは、
ユダヤ人を見殺しにしたハンナを許すことができない。
でも、彼にとっては大切な人。
だから、彼はただ単に「朗読者」に徹することにしたのでしょう。
「朗読者」以上でも、以下でもない。
だから、手紙の返事も出さなかった。
しかし、ハンナの出所におよんで、
そこで初めて「朗読者」以上のものにならなければならなくなる。
これでは今までの彼の決意がくずれてしまうので、マイケルは気が進まない。
ハンナはそんなマイケルの心情が読めてしまったのでしょう。
ただ単純に好きで好きで・・・
二人で過ごした美しい時間。
青春の時。
その刹那の貴重さが、改めて胸に迫りますね。
2008年/アメリカ・ドイツ/124分
監督:スティーヴン・ダルドリー
出演:ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロス、レナ・オリン
『愛を読むひと/朗読者』日本版予告編 The Reader Movie Trailer
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ベルンハルト・シュリンクの原作、「朗読者」は、
ベストセラーとして話題になっていた頃に読みました。
だから、この映画の一番のミソの、ハンナの秘密は知っていました。
でも、そんなことはさしたる問題ではなく、引き込まれて観ました。
それはここに登場するハンナの鮮烈な生き様に圧倒されるから・・・。
見終わった後、ややボーっとしてしまうくらいに上質な作品です。
「泣ける」というのとはちょっと違うのですが、魂が揺り動かされる気がします。
1958年ドイツ。
15歳マイケルが21歳年上のハンナという女性と初めての情事を持ちます。
意志の強そうな大人の女性ハンナは、
マイケルを「坊や」とよび、本の朗読を課します。
初恋に燃え上がるマイケル。
朗読と情事にくれる一夏。
しかしそんなある日、彼女は忽然と姿を消してしまいます。
その後、1966年。
マイケルは大学で法律を学んでいます。
なんと法廷の被告席にいるハンナを見つけるのです。
それは、ナチスに加担したものに対する裁判。
しかし、そのこととは別に、
マイケルはハンナが必死に隠し通してきた彼女の秘密に気づくのです。
美しい青春の愛と挫折。
始まりはそんな風です。
ここの情事は結構濃密でありながら、ちょっと切なくキレイですね。
しかし、ふたたび会うことがなければ、
単に美しい思い出として終わったかもしれません。
でも、幸か不幸か、二人の人生はまた交差してしまう。
そして、それはマイケルのその後の人生にずっと暗い影を落とし続ける。
ユダヤ人収容所の看守として務めたハンナですが、
それは与えられた職務だった。
そうした中での責任をどこまで問うことができるのか・・・。
こうしたホロコーストにまつわる部分も
この映画の大きなテーマではあるのです。
でも、もっと大きなテーマは、
このハンナの、凛とした孤高の生き方にあると思います。
何者にも寄りかからず、誇り高い精神。
マイケルは結局彼女のために「朗読者」であることしかできなかった。
でも、それは実は彼女の欠けたところを補う、
とても大切なピースではあったのですね。
なぜマイケルは彼女の秘密を明かすことをしなかったのか。
いろいろなことが考えられます。
ここをはっきり言わずに、見るものにゆだねたところがいいですね。
彼が届けるテープは、つぐないなのか、慰めなのか。
余韻が残ります。
ベッドで本を読む男女。
ずっと忘れられないシーンになりそうです。
さて、ケイト・ウィンスレットは実に見事に「ハンナ」でした。
彼女が持つ強さと弱さをきちんと表現している。
アカデミー賞最優秀主演女優賞。大いに納得です!
<追記>2009/6/27
この映画は、記事にした後もいろいろ考えてしまったのですが、
時間を置くともう少しきちんと見えてきました。
上記文中に『マイケルは「朗読者」であることしかできなかった。』
とあるのですが、
これは、マイケルがあえてそういう選択をしたのですね。
正義感の強いマイケルは、
ユダヤ人を見殺しにしたハンナを許すことができない。
でも、彼にとっては大切な人。
だから、彼はただ単に「朗読者」に徹することにしたのでしょう。
「朗読者」以上でも、以下でもない。
だから、手紙の返事も出さなかった。
しかし、ハンナの出所におよんで、
そこで初めて「朗読者」以上のものにならなければならなくなる。
これでは今までの彼の決意がくずれてしまうので、マイケルは気が進まない。
ハンナはそんなマイケルの心情が読めてしまったのでしょう。
ただ単純に好きで好きで・・・
二人で過ごした美しい時間。
青春の時。
その刹那の貴重さが、改めて胸に迫りますね。
2008年/アメリカ・ドイツ/124分
監督:スティーヴン・ダルドリー
出演:ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロス、レナ・オリン
『愛を読むひと/朗読者』日本版予告編 The Reader Movie Trailer
見ごたえのある、すばらしい作品だったと思います。いろいろなことを考えてしまいました。
レビューをまとめるに四苦八苦しました。
ケイトの演技は「レボリューショナリー・ロード」の方が迫力あったように私は感じました。
だけど、彼女はさすがですね。
この作品は、普通によくある映画なら、こうはならない、というような展開の仕方をしますね。
でも、そこに割り切れない人間の本当の姿があるような気がします。
ケイト・ウィンスレットはこういうヒューマン系がいいですよね。
タイタニックに出ていたのが、むしろ例外的のような気がします。