人が人を思う気持ち
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広告代理店に勤める大伴恭一(大倉忠義)は妻がありながら、不倫をしていました。
そんなところへ、大学時代の後輩、今ヶ瀬渉(成田凌)が浮気調査員として現れます。
そして恭一にカラダと引き換えに、不倫の事実をなかったことにしてもいい、というのです。
渉は7年間一途に恭一を思い続けていた・・・。
ゲイの気のない恭一は、始めは気色悪いとしか思えなかったものの、
次第にその心と体になじんでいき・・・。
恭一は、もともと来る者拒まずという感じで、
常に相手を変えては恋愛を繰り返してきたのです。
妻との結婚も、たまたまそんな気になったというだけで、
強い愛を持っていたというわけではありません。
そもそもその恋愛対象者や妻のことを深く知りたいとも思っていなかった。
そんなだから、妻は結婚生活にもむなしさを覚え、
他の男性に惹かれ、不倫し、
妻の方から恭一に離婚を言い渡したのです。
そして、大学時代初めて会ったときから恭一を好きだったという渉は、
そういう恭一のことを知り尽くしていた。
そこも含めて好きだ、というのです。
その一途な思いにほだされたというか、
いないとさみしいという気持ちが恭一に芽生えてくる。
けれども彼は、自分はノンケ、ゲイは単なる寄り道、
本当の自分はこうではない、と、この期に及んでも思っている。
というか、思おうとしている。
そのことが、渉を傷つけるのですね。
接近したと思えば離れていく2人の心・・・。
なかなかに切ない物語。
最近私、ゲイの2人の絡み合いを見ても、
全然気色悪さとかは感じなくなったような気がします。
異性間でも同性間でも、それは2人だけの、
人には見せられない破廉恥な秘め事ということには変わりなし。
・・・と、近頃私は達観しています。
人が人を思う気持ちに変わりはない。
が、現実には同性間のそういう営みは、強い嫌悪感や、差別意識、
宗教によっては犯罪と見なされるといったことがまだまだ根強いですね。
今後こういうことは長い年月をかけて普通のこととなるのか、
それとも、寄せて返す波のように、また逆行していくこともあるものなのか・・・
残念ながら私の生のある内に、結果を見届けることはできそうにありません。
女性差別とこうしたLGBTへの差別意識は非常に強い関係性があると聞いたことがあります。
どこやらの元総理大臣の女性差別意識丸出しの方は、
口ではわかったようなことをいいつつも、きっと強いLGBT差別意識の持ち主だと思います。
ともあれ、本作は結構ディープなシーンもありますが、
私は成田凌さんの「乙女」チックな視線にやられました。
乙女チックなどという言い方も良くないかな・・・?
<Amazon prime videoにて>
「窮鼠はチーズの夢を見る」
監督:行定勲
原作:水城せとな
出演:大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ
同性愛度★★★★★
満足度★★★★☆
台詞のひとつひとつが、心に刺さる。
私の中では、去年のピカイチです。
ミッドナイトスワンが賞をとるなら、行定監督にもと思ってます。
コメントありがとうございます。
まさに、あなどれない作品でした。
ノンケ=正常という意識は、私たちの中ではまだまだ根強いので、恭一の気持ちはわからなくもないですね。
そんな自分の気持ちを見つめ直していく様。
いい物語でした。